6:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:28:35.46 ID:xxUFkxwt0
――――――――――…
しずか「のび太さん、明日は家に誰もいないわ……」
のび太「明日だね……わかった。」
のび太はそう言い終えると
電話を切った……
思春期のカップルが交わすような
やましい会話ではない
大佐でさえ公共施設に壊滅的な被害を与えたのだ
残る少将や中将がもたらす被害規模は恐らくそれ以上…
ドラえもんと戦う為、そして自分達の身を守るために
今一度みんなで作戦会議を開くことにした
10:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:30:29.21 ID:xxUFkxwt0
――8月4日、朝――――――…
ーしずか宅ー
ジャイアン「さて、今日はみんなに集まってもらったわけだが…」
スネ夫「ちょ……ジャイアン、ここはしずちゃん家だし…ややこしいからのび太に仕切らせた方が……」
ジャイアン「お、おう…そうだったな……」
しずか「戸締り終わったわ…」
のび太「じゃあ始めるよ」
12:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:30:58.74 ID:xxUFkxwt0
とうとう強敵の候補である『大佐』まで仕留めた
残る部下の内、脅威なのは『少将』と『中将』である
のび太はこれまでの記憶をもとに
相手が持っているであろう道具を分析し、今後の対策を練ろうと提案した
しかし……
ジャイアン「ちょっと待てよ!」
ジャイアンがのび太の話に割り込む
スネ夫「ちょ……ジャイアン……話はまだ始まったばっかりだよ……」
ジャイアン「のび太、俺達が聞きたいのはそういう話じゃねぇ……」
のび太「……?」
ジャイアン「出木杉が今どうなっちまっているのか!!まずはそこだぜ!!」
16:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:31:54.28 ID:xxUFkxwt0
しずか「出木杉さんが……この戦いに巻き込まれているの!?」
スネ夫「そういえば、しずちゃんは知らないんだっけ……僕らは一度『階級ワッペン』を貼られてしまったのさ」
ジャイアン「ニュースで動物園の惨状を見たけどよ……あれは人を何とも思ってねぇような奴にしか出来ねえ行動だ……!!」
ジャイアン「もし出木杉までああなっちまってたら……元に戻す手立てはあるのかよ!?」
のび太「それについては心配ない…」
三人「!?」
のび太「………………と思う」
スネ夫「なんじゃそりゃ」
20:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:33:10.02 ID:xxUFkxwt0
のび太「いや、根拠が無いわけじゃない。ワッペン以外にも道具で洗脳しているとすればそれは『桃太郎印のきび団子』……」
ジャイアン「だから!それを出木杉が食っちまってたら……!」
のび太「君たちはワッペンを貼られた時、ドラえもんに直接会ったかい?きび団子は食べた?」
スネ夫「そういえば団子どころか………」
ジャイアン「ドラえもんにすら会ってねぇなあ……」
のび太「そう。君たちはワッペンを貼られた後すぐに、支給係から道具を貰いそのまま僕を倒しに来たんだ。」
スネ夫、ジャイアン「………?」
のび太「つまり准士官程度にワッペンを貼られた出木杉は放置プレイ状態!大した事ないってことさ!」
ジャイアン、スネ夫「……………根拠になってない!!」
しずか〈のび太さんは出木杉さんの事、嫌いなのかしら……?〉
24:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:34:07.79 ID:xxUFkxwt0
スネ夫「あれから20日近く経ってるんだぜ?流石にドラえもんも全員の部下を召集して『きび団子』を食わせているんじゃ……」
のび太「それは無いよ。2日前、僕は中尉や大尉と一戦交えたけど…彼らは既に自分達でワッペンを破いて、ドラえもんへの忠誠すら無かった。」
スネ夫「ドラえもんも随分とずさんな管理体制だなぁ……」
のび太「そこだよ。色々思い返してみると道具もワッペンも下の階級に行くほど部下にまかせっきり……」
しずか「そこまで部下には期待していないのかしら?」
のび太「沢山戦わせて僕にいくつか道具を消費させるのが目的なんだと思う……だからドラえもんにとって下の階級の者は捨て駒みたいなものなんだ。」
ジャイアン「酷ぇ話だな……」
28:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:34:46.49 ID:xxUFkxwt0
のび太「そこでさっきの話に戻るけど……現在、僕は見事に敵の術中にはまってしまっている訳だ……」
のび太「相手の持っている道具をとことん悪用すれば恐らく、大勢の人達が被害に巻き込まれる事になる……」
三人「!?」
のび太「起死回生の道具が底を尽きた今の僕には人命救助が出来ない……だからこの道具を君たちに渡しておく」
のび太「この…『テキオー灯』で君達は人命救助に専念して貰いたい……!」
スネ夫「……てことは、のび太は今まで通り一対一で敵に挑むのかい!?」
しずか「そんな…!危ないわ!」
のび太「わかっておくれよ……そりゃあ四人で敵を迎え撃ちたいけど…そうすれば無関係の人達に被害が及んでしまうんだ……」
30:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:35:11.98 ID:xxUFkxwt0
ジャイアン「わかったぜ!のび太の心意気、確かに受け取った…!」
スネ夫「ジャイアン…!?」
しずか「たけしさん……?」
ジャイアン「街の人達の救助は俺達に任せて、お前はお前の成すべき事をやりな!」
のび太「……ありがとう、ジャイアン!」
しずか「たけしさん……でも……」
ジャイアン「しずちゃん、そりゃあ俺達も協力してぇ……けど、俺達に出来るのはこいつの邪魔をしない事だけだぜ……!」
36:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:36:32.10 ID:xxUFkxwt0
しずか「そ……そうね………少しこの場を外すわ……お手洗いに行ってくる……」タッタッタ…
のび太「なんだか具合悪そうだね…大丈夫かな……」
ジャイアン「これはひょっとすると…!」
スネ夫「しずちゃんはのび太の事が……!」
のび太「え?え?ええ!?」
スネ夫「おいおい耳まで赤くなっちゃって!」
ジャイアン「ほんとわかり易い奴!」
39:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:37:28.57 ID:xxUFkxwt0
キャ――――z___ッ!!
三人の笑い声が
突如、悲鳴によって掻き消える…!
スネ夫「今の悲鳴は……!」
のび太「しずちゃん!?」
ジャイアン「……行くぜ!のび太、スネ夫!!」
42:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:38:03.96 ID:xxUFkxwt0
のび太「こっちからだ!!」ガチャッ!
しずか「いやーーーまだ入っちゃだめーーーー!」 ドコ!バキ!グシャッ!!
のび太「……っ」
ジャイアン・スネ夫「oh……」
のび太〈こんな時に風呂に入ろうとするやつがあるかっ……!!〉
しずか「……着替えたわ…これ見て…」
しずかは浴室へ三人を案内し
浴槽に浮いている物体を指差した……
44:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:38:38.64 ID:xxUFkxwt0
しずか「お風呂に入ろうと覗いてみたら既に……」
のび太「これは……『瞬間移動潜水艦』!!」
スネ夫「潜水艦って……なんでそんなものがここに?」
のび太「ただの潜水艦じゃない……これは中のスイッチを押せば水場から他の水場へワープできる……」
ジャイアン「てことはよぉ、つまり……」
しずか「誰かがこの『瞬間移動潜水艦』を使って……この家に侵入したって事…?」
のび太「……恐らく」
46:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:39:22.36 ID:xxUFkxwt0
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・・
スネ夫「じ……冗談じゃないやい!今も僕らの様子を伺っているかも知れないなんて……」
のび太「待った!単独行動は危険だ…!少なくとも四人で固まっている内は大丈夫だと思う」
ジャイアン「確かに……始めから俺達を倒せるならこんな回りくどい方法で襲ってはこねぇ…!」
しずか「でも……この家へ侵入しているのなら、放っておくわけにはいかないわ」
スネ夫・ジャイアン「…………」
のび太「ひとまず部屋に戻ろう。もし家の排気口を使って移動していたら…『換気扇』があるこの場所は危険だ……」
50:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:40:11.42 ID:xxUFkxwt0
ーリビングー
ジャイアン「おい……こりゃあ……!」
スネ夫「しずちゃん家ってこんなに広かったっけ……?」
しずか「どうなっているの……!?」
四人がリビングへ移動すると
そこは野球場がすっぽり収まるほどの巨大な空間となっていた…!
のび太「家具の位置や大きさはそのまま……部屋の幅だけが異様に大きくなっている…!」
ジャイアン「こんだけ広いと移動にも一苦労だぜ……」
52:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:40:50.53 ID:xxUFkxwt0
スネ夫「……あの……ちょっと今、言いにくいんだけど……」モジモジ…
ジャイアン「どうしたスネ夫?」
スネ夫「その……トイレ貸してくれないかな……」
しずか「トイレならここの扉を戻って、さっきのお風呂場の隣の部屋よ」
スネ夫「はいはいさっきのとこね…」ガチャ
ジャイアン「どうした?忘れ物か?」
スネ夫「あれ?あれ?」
54:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:41:24.21 ID:xxUFkxwt0
スネ夫「い…いや何でもない……」ガチャ
しずか「?」
スネ夫「あれ?」
ジャイアン「どうしたんだ?トイレはその扉の向こうだぞ?」
のび太「い……いや…これは………」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
スネ夫「なんで今、僕は部屋から出たのに……またこの部屋に戻ってくるんだ!?」
62:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:42:38.81 ID:xxUFkxwt0
のび太「扉の先がこの部屋に繋がっているという事か……なら、秘密道具によるものだ……!」
ジャイアン「すると何だ?敵の攻撃は既に始まってるっていうのか!?」
しずか「一体どういう事……?」
スネ夫「それより、このままじゃ僕はトイレに行けない!!」
のび太「『無生物催眠メガホン』ッ!ここはトイレ前の廊下!」
のび太がメガホンで叫ぶと
のび太達のいたリビングの景色がうねり
廊下へと姿を変えた…!
スネ夫「うぉ!トイレ前に移動した!サンキュー、のび太!」ガチャ!
66:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:43:21.35 ID:xxUFkxwt0
のび太「とりあえずこれで移動はできるけど……!」
ジャイアン「な…なぁ……この廊下も広くなってないか……?」
ジャイアンの言う通り
先程まで普通だった廊下の横幅は
電車が二台収まるほどの広さに達していた
スネ夫「お待たせ………何だか家中変になってるみたいだね……」
しずか「自分の家じゃないような気がして……気味が悪いわ……」
のび太「一旦外へ出よう!『無生物催眠メガホン』ッ!ここは玄関!」
68:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:43:53.40 ID:xxUFkxwt0
のび太達は玄関の扉を開けた…!
スネ夫「ねぇ……これって……」
ジャイアン「外へ出たと思ったら………しずちゃん家の玄関に戻っちまった!!」
しずか「それに私の家の玄関……こんなに広くないわよ……」
のび太「これじゃあまるで大型ビルのエントランスだ……!」
ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・
スネ夫「ど……ど……どうなってるんだよのび太!」
のび太「……潜水艦で侵入した奴が道具を使って家の中を複雑にしているんだと思う……!」
71:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:44:46.04 ID:xxUFkxwt0
ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・
しずか「電話が鳴ってるわ……どうしようかしら……」
のび太「取らないほうがいい……!今、鳴り響いている電話の着信音が途切れれば敵に位置を知らせるようなものだ……」
ジャイアン「こんな状況で宅配や何かに来られても出迎えようが無いしな……」
スネ夫「電話の音……!そうか!それだよのび太!」
のび太「?」
73:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:45:19.97 ID:xxUFkxwt0
スネ夫「僕が電話に出る…!敵をおびき出してみんなで倒すんだ!」
のび太「!!」
しずか「そんな……危ないわ…!」
スネ夫「どうせ敵は隠れてコソコソしてる様な奴さ……!この一本道の広い廊下に誘き出せば逆にこっちが有利だよ!」
ジャイアン「よっしゃ!そんなら俺が…!」
スネ夫「駄目だよ…!ジャイアンこそ敵をやっつける役目じゃないと僕は安心して囮になれない!」
ジャイアン「スネ夫……!」
スネ夫「別に立派な事じゃあない……僕が怖いから……この状況をさっさと終わらしたいからやるんだぜ……!」
スネ夫「さぁのび太!そのメガホンで三人とも移動して身を潜めてくれよ!合図は僕が出す!」
80:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:46:17.65 ID:xxUFkxwt0
スネ夫を残し
三人は他の部屋へと移動した
ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・
スネ夫「さ……さぁ取るぞ……!どこからでもかかって来い!」 ガチャ!
スネ夫「はいもしもし!こちら源ですが――――――――」
スネ夫は警戒を強めつつ、相手の出方を考えていた
自分が敵ならこの状況をどこから覗いているだろうか―――――
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・・
スネ夫「――――――――ッ!?」
82:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:46:46.90 ID:xxUFkxwt0
しずか「遅いわね……何かあったのかしら……?」
ジャイアン「もう敵が出てきていてもおかしくねぇ!のび太!」
のび太「『無生物催眠メガホン』ッ!ここは電話前の廊下!」
――――――…
ジャイアン「な……なんてこった……!」
三人が援護に駆けつけるも
既にスネ夫の姿は無かった…!
85:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:47:13.76 ID:xxUFkxwt0
ジャイアン「どこ行っちまったんだーーー!!スネ夫ーーーーッ!」
のび太「どういう事だ…!?『取り寄せバッグ』でもスネ夫を取り寄せられない…!!」
ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・
ジャイアン「また電話がかかってきた……話してる途中で襲われたのか…!?」
しずか「今度は囮になるわ…!」
のび太「そんな……!!」
しずか「のび太さん、私なら大丈夫。私ならどこから襲われようと、この『バリヤーポイント』が守ってくれるわ。」
86:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:47:34.91 ID:xxUFkxwt0
のび太「いや……今度は三人だ……三人で迎え撃つ……!!」
しずか「大丈夫よ!私でも戦える!」
ジャイアン「い……いや得策だぜ…このまま得体の知れない敵に一人ずつ襲われたらそれこそ絶望的だ……!」
のび太「そういう事、三人でも敵わないんじゃ、どの道勝てっこない相手だってことさ……!!」
しずか「…そうね……ごめんなさい……強がっちゃって……」
のび太「いいさ…!!さぁ、しずちゃん!受話器を取って!」
しずか「ええ……!」 ガチャ!
89:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:47:57.48 ID:xxUFkxwt0
しずか「はい、こちら源静香ですけど…」
宅配屋『ああ~、そちら源さんのお宅ですか?…アマゾン様から宅配物が届いております。今からお伺いしても―――――』
ジャイアン「さぁ……出て来い……!」
のび太「……!」
ジャイアンがリビングへと通じる扉を
のび太が玄関へと
それぞれ廊下の先を見据えて構える……!
ジャイアン「あーーーーーーーーー!お前はーーーーー!!?」
のび太「!?」
90:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:48:22.93 ID:xxUFkxwt0
ジャイアンが叫ぶ!
その視線の先には少し開いた扉から顔を覗かせる出木杉の姿があった…!
ジャイアン「見たかのび太!!今のは出木杉……!!」
のび太「じゃ……ジャイアン、それより……!!」
ジャイアン「あ……あれ……!?」
二人が顔を見合わせ気付く!
しずちゃんの姿がない……!!
のび太「しずちゃんがいなくなった!!いつ攻撃されたッ!?」
ジャイアン「で……出木杉が逃げていくぜ!?どうする!?」
91:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:48:46.18 ID:xxUFkxwt0
のび太「逃がさないッ!!」
稲妻ソックスによる踏み込みからの突進!
のび太は瞬く間に扉の向こう側まで駆け抜け
出木杉目掛けて体当たりした!
ジャイアン「す…すげぇ……ラグビー選手も真っ青だぜ……」
のび太「捕まえたぞ…ッ!!」
出木杉「は……離せぇ!!」
ジャイアン「ワッペンのついた上着を脱がすぜ!!」
92:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:49:31.06 ID:xxUFkxwt0
ジャイアン「脱がしたぜ……どうだ!?」
のび太は嘘発見器を取り出し
出木杉に向けた
のび太「君は今もドラえもんに忠誠を誓っているのかい!?」
出木杉「ぼ……僕はもう正常だよ……離して……!!」
のび太〈反応無し……洗脳されていない!〉
出木杉「ふぅ……二人ともすごい形相で……殺されるかと思ったよ……!!」
95:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:50:43.65 ID:xxUFkxwt0
ジャイアン「ワッペンを貼られる以外に何かされなかったのか?」
出木杉「何かされるどころか、ドラえもんはここ最近全然連絡を取り合ってくれなかったんだ……」
のび太「?」
出木杉「僕だけじゃない、他の幹部にものび太君達を抹殺する日程を指示してそれっきりみたいだよ」
ジャイアン「なるほど……通りで最近平和だったわけだ……」
のび太「それで君は今日襲って来たわけだ。」
出木杉「そう。以前、准士官に渡されたこの道具を使ってね……」
96:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:51:16.89 ID:xxUFkxwt0
出木杉は手に持っている
『引き伸ばしローラー』と『空間ひん曲げテープ』を見せた
出木杉「非力なもんだよ。『ひき伸ばしローラー』で各部屋の幅を大きくして『空間ひん曲げテープ』で扉の先をごちゃごちゃにかき回すしか手が無かった」
ジャイアン「戦闘用じゃあねーな……」
のび太〈うーん、あの頭の良い出木杉がこんな手段しか使ってこないなんて……いや、この道具でよくここまでやったと言うべきか……〉
ジャイアン「それじゃあ、スネ夫やしずちゃんはどうやって消したんだ?」
のび太「そうだった…!二人はどこへ…!?」
出木杉「それが……言いにくいんだけど……」
99:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:51:53.35 ID:xxUFkxwt0
ジャイアン・のび太「『中佐』と協力関係!?」
出木杉「ごめん!この程度の道具しか貰えなかった『上等兵』の僕じゃあ君達に負けてしまうから……上の階級の人に協力してもらったんだ………」
ジャイアン「や……やってくれるぜ………二人がいなくなっちまったのは『中佐』の攻撃ってわけか…!」
のび太〈やっぱり出木杉は敵にすると面倒くさい奴だなぁ……〉
出木杉「僕の役割は中佐から貰った『瞬間移動潜水艦』でここへ侵入し、君達を引っ掻き回して分断させる役割………」
ジャイアン「思惑通りじゃねーか……むしろ出来杉が戦闘用の道具を渡されてなくて良かったよ。」
のび太「まったくだよ。ところでその肝心の中佐は…?」
出木杉「それが……中佐の道具までは教えてもらえなかった。こういうケースも想定しているだろうね……」
101:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:52:37.35 ID:xxUFkxwt0
ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・
ジャイアン「で……電話だ……!」
のび太「待ってジャイアン!その電話……何かおかしい……!」
ジャイアン・出木杉「………?」
のび太「スネ夫もしずちゃんもその受話器を取ってから行方を暗ましたんだ……!」
のび太「特にしずちゃんは『バリヤーポイント』があるにも関わらず行方を暗ました……」
のび太「『バリヤーポイント』は許可無き物を絶対に通さない……例外があるとすれば、その『受話器』……!」
ジャイアン「受話器から……攻撃したっつーのか!?」
のび太「それしか考えられない……」
104:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:53:15.03 ID:xxUFkxwt0
ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・
出木杉「敵の攻撃を見極める方法ならあるんだけど……言いにくいなぁ……」
ジャイアン「本当か!?」
のび太「一人目の犠牲で攻撃を見極める……更に敵が二人目を仕留め油断したスキに、三人目が反撃をする……」
出木杉「そう!だけど言い換えれば犠牲は二人必要で、最後の一人は必ず勝たなければならない………」
ジャイアン「じゃあ俺が囮で、ラストはのび太でいいんじゃないか?」
のび太「元部下の出木杉が最後のほうが相手も油断するかも……」
出木杉「いや、僕は二人目の囮になるよ。道具はのび太君のほうが使い慣れているし、僕も信用を取り戻したいからね」
のび太・ジャイアン「出木杉……」
105:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:53:42.71 ID:xxUFkxwt0
ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・
ジャイアン「じゃあ……受話器をとるぜ……!」
のび太・出木杉「うん……!」
ジャイアン「はいもしもし、こちら源ですが……!」ガチャ
宅配屋『ああ~やっと繋がった。さっきから電話が途切れちゃって……何かあったんですか?』
ジャイアン「え…ええちょっとゴタゴタで……!」
出木杉「のび太君……この電話の声……!」ヒソヒソ
のび太「……!!」
出木杉「『中佐』の声だ……!」
109:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:54:19.74 ID:xxUFkxwt0
その時である……!
受話器の送話口から突如、手が飛び出し
ジャイアンに対しビー玉の様な物が投げつけられた!
ジャイアン「――――――――――――ッ!」
のび太〈ジャイアンが…!!〉
出木杉〈地面に沈んでいく!?〉
受話器から生えた手はその身を動かし
電話を元の位置へと戻すと、姿を消した
110:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:54:49.35 ID:xxUFkxwt0
出木杉「送話口から手が生えた……!これって昔、僕が悩まされたイタズラ電話の犯人を捕まえる為に君が使ったっていう……!」
のび太「『物体電送アダプター』ッ!!あの道具で受話器から手を伸ばして『しずめ玉』をジャイアンに投げつけたんだ……!」
※しずめ玉
当たると身体が地に沈む。沈んだ後は意識が無くなり気絶した状態になる
出木杉「じゃあ、他のみんなもこの地面の下に沈んでいるんじゃ……?」
のび太「そうだろうね……みんなを戻すには沈んだ場所に『うかび玉』を投げつけるしか方法は無い…!」
ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・
のび太〈取り寄せバッグで『うかび玉』を奪いたいけど……掴むのに失敗したら奴は二度と電話をかけてこないだろう……これが最後のチャンス!〉
出木杉「準備はいいかい……取るよ……!」ガチャ!
112:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:55:13.46 ID:xxUFkxwt0
宅配屋『もしも~し?お荷物が届いているんですが今からお伺いしてもよろしいでしょうか~?』
出木杉「…………」
宅配屋『もしも~し?聴こえてますか~?』
出木杉「はい!!」
再び受話器から手が飛び出し
出木杉に『しずめ玉』が投げつけられる!
出木杉「のび太君!今――――――――――――ッ!」
のび太は受話器から伸びている手を掴み
向こう側へと移動した!
115:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:55:40.89 ID:xxUFkxwt0
ーとある家ー
中佐「う……うわああああああッ!?」
のび太「お前が中佐か……!!」
中佐「ここまで伝って来たのか!?」
のび太〈スキありッ!!〉
のび太は取り寄せバッグに手を突っ込んだ!
117:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:56:07.30 ID:xxUFkxwt0
のび太「痛ッ……!!」
中佐「……君の狙いは僕のポケットに入っている『うかべ玉』という訳か……!」
のび太〈こいつ……カッターナイフを忍ばせていたのか……!!〉
中佐が床に散らばってある漫画を踏みつけると
その身体が徐々に沈んでいった…!
中佐「『絵本入りこみ靴』はそこにもう一足揃えてある……君も、ついて来るよな……?」
のび太〈何の漫画かわからないけど……奴を追わないと『うかび玉』は回収できないぞ……!〉
119:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:56:43.96 ID:xxUFkxwt0
ー漫画の中の世界ー
のび太「どこにいったんだ……?」キョロキョロ
のび太は漫画に入り込むと
学校のグラウンドのような場所に飛び出した
のび太〈あそこにいるのは…中佐か!?何をやっているんだ!?〉
中佐〈ついて来たか……馬鹿め!〉
123:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:57:33.93 ID:xxUFkxwt0
中佐「君の名前は……『野比のび太』……そう、『野比のび太』だ……」
のび太「……?」
中佐〈……校舎まで思ったより距離があるのが気に入らないが……まぁいいだろう!〉
中佐は校庭に落ちている黒いノートを拾うと
何かを記入し始めた…
のび太「そ……そのノートは……!?」
中佐〈いくら僕でも『稲妻ソックス』とやらを持つ相手に逃げ続けることは出来ない……だからここでケリをつけるッ!!〉
124:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:58:10.58 ID:xxUFkxwt0
秘密道具には無い得体の知れないノート…
追い詰められたこの場で使うからには攻撃手段に違いない…!
のび太は中佐の行動を阻止する為
勢い良く前方に飛び出す!
しかし…!
のび太「うわ!?か……身体が…沈むッ!?」
中佐〈かかったッ!〉
中佐がニヤリと笑う…!
のび太がこの世界に潜り込むまでに
『しずめ玉』を地面にばら撒いていたのだ…!
中佐「これで君はゲームオーバー………だが念の為、『死の状況』も記載しておくッ!僕の完全勝利の為に!」
125:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:58:57.23 ID:xxUFkxwt0
中佐「ぐッ!?」
中佐にとって想定外の出来事が襲う…!
ノートに筆を走らせた瞬間
衝撃波がその手を貫いたのだ!
のび太〈漫画の中に入る直前、『空気ピストルの元』を手に塗っておいたのが功を奏した……!〉
中佐「指先から何かを飛ばしたのか!?……それはともかく、まだ地中に沈んでいないだとォ……ッ!?」
のび太は下半身こそ地に埋もれてしまっているものの
しずめ玉の効力に対し懸命に抗っていた
のび太「タ……タケコプターの持ち上げる力よりも強いのか……このままでは沈んでしまうのも時間の問題だ……!」
129:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:59:28.48 ID:xxUFkxwt0
中佐〈『状況』だ……このまま待っても奴は死ぬが……筆を拾い『死の状況』を記載して奴の動きを完全に封じなければ……ッ!〉
のび太「筆を拾おうとしている……や…やっぱりあの黒いノートはこの世界にある特有の物だ……恐らく僕を抹殺する為の……!」
のび太は再び空気ピストルの弾を発射し
中佐の両足を貫く!
中佐〈くそッ!!気付かれたか!?だが、名前は書いたんだ……残り30秒で奴は死ぬ…ッ!〉
のび太〈スネ夫から聞いた事あるぞ……ノートに名前を書かれたら40秒で死んでしまう漫画の話……!〉
130:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 20:59:59.15 ID:xxUFkxwt0
のび太は取り寄せバッグからフリスビーのような円盤を取り出し
中佐の近くへ放り投げた
中佐「何を投げた……あれは……『的』!?」
のび太「『はこび矢』……この矢は僕ごと『的』の真ん中へと飛んでくれる……!」
中佐「!!」
のび太は『はこび矢』を真上へ放つ
のび太〈この浮力でかろうじて身体が持ち上がる程度か……だけど、矢は着実に中佐の近くに向かって前進している……!〉
中佐〈23……22……21……20……19……〉
133:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:00:32.23 ID:xxUFkxwt0
のび太〈かなり近づいたぞ……後はこの『N・Sワッペン』を空気ピストルで弾いて奴の額に命中させるッ…!〉
ビシィッ!!
中佐「何を……くそッ!剥がれないッ!?」
のび太「『N・Sワッペン』だ……君の額に張られたNワッペンと僕の持つSワッペンが磁石の様にお互いの体を引き合わせる……ッ!」
しずめ玉の効力に抗うので精一杯ののび太が
今更近づいてきたところで何が出来るというのだろうか…
しかし中佐の頭の中に巡ったのは慢心とは真逆に位置する考えであった…
中佐〈コイツは近づいた以上『何かする気』だ……そう考えて挑まなければ……!〉
中佐はかろうじて動かせる片腕で
胸ポケットからライターを取り出すと黒いノートに火をつけた
のび太「ッ!?」
135:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:01:01.74 ID:xxUFkxwt0
中佐「君が『ノートの内容を消す』道具を持っていないとも限らない……可能性は潰しておかなきゃな……!」
のび太〈ノートが燃えても記載した事実は取り消されないのか……!!〉
中佐は腕時計を確認し
不敵に微笑む…!
中佐「残り8秒だ……!」
ノートの内容が変えられる可能性も潰えた…
中佐は嬉々として絶望へのカウントダウンを始めた…!
137:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:01:51.15 ID:xxUFkxwt0
中佐「5……4……3……!」
のび太「うおおおおおおおおおおおッ!!」
中佐「!?」
のび太は雄叫びを上げながら飛びかかり
中佐の足首を掴んだ
中佐「必死に飛び掛ったところで僕にダメージは与えられず……悪あがきも空しく終わったな!これで僕の勝ちだッ!!」
のび太「――――――ッ!?」
ドクン!!
138:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:02:15.60 ID:xxUFkxwt0
中佐「………」
のび太「………」
中佐「………」ヨロ…
のび太「おっと!」
地面に崩れ落ちる中佐を
支えるように抱え上げるのび太
のび太「……まず『うかび玉』を回収しなくちゃな……」ゴソゴソ…
139:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:02:39.13 ID:xxUFkxwt0
のび太「これで良し、と………」
のび太が抱え上げている両腕を放すと
中佐のその身は地の底へと沈んでいった……
のび太「『しずめ玉』は対象が地中に沈み気絶する事で初めて効果が発動したと言える……」
のび太「その黒いノートも君の秒読みが完了する事で本来の効果が発動する物なのだろう……」
のび太「効果が完全に発動する前なら『タッチ手ぶくろ』で全て君に押し付ける事が出来る……」
のび太「…………」
のび太「正当防衛とはいえ……後味の悪い結末だ………」
141:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:03:06.73 ID:xxUFkxwt0
ーしずか宅ー
のび太「みんな……大丈夫かい…!?」
ジャイアン「どうやら終わったみてぇだな……」
回収した『うかび玉』を使った事により四人を救出する事に成功したのび太
四人は歓喜……というより落胆の気持ちの方がやや強い様子である…
スネ夫「……のび太の言う通り人命救助に専念するよ……早々離脱するようじゃこの戦いについていけそうもない……」
しずか「そうね……それより出木杉さん。広くなった家を元に戻せないかしら?」
出木杉「今から戻すけど……それよりテレビで確認したい事があるんだ……」
のび太「……?」
146:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:04:54.37 ID:xxUFkxwt0
ーリビングー
出木杉「思ったとおりだ……ほら、このニュース……!」
映し出した映像は一局を除き
ほぼ全てのチャンネルが臨時中継へと繋がっていた…!
ジャイアン「ま……町の人たちが……!」
スネ夫「道路で溺れている!?」
しずか「水も無いのにどうして!?」
出木杉「本日強襲を指示されていたのは僕や中佐だけでは無かったってことさ……!」
のび太「先手を取られたわけか……けどやる事は変わらないんだ!!みんな、今すぐ都心部へ行こう!!」
150:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:06:16.63 ID:xxUFkxwt0
ー都心部ー
しずか「着いたわね……」
スネ夫「それにしてもあっという間だなぁ」
のび太「タケコプターは時速80キロ近く出るからね……みんな、テキオー灯は浴びたかい?」
ジャイアン「おう!バッチリだ!」
出木杉「僕らはさっそく救援活動にあたろう……!のび太くん、無理をしちゃ駄目だよ!」
のび太「わかってるさ!みんな頼んだよ!」
ジャイアン「遠慮無くやっつけてこいよ!」
151:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:06:39.12 ID:xxUFkxwt0
※ドンブラ粉
この粉を体に付けると体の触れている床、地面、壁などが水のようになり
床や地面で泳いだり、壁を泳いで突き抜けることができる
一般市民が地面に溺れる状況があるとすれば
それは『ドンブラ粉』によるものであろう…
のび太〈ドンブラ粉を散布しているとすれば……『高所』……!!〉
のび太〈そして風向きだ……この都心部に風が入り込む場所にそびえる建物……!!〉
のび太「あそこか……!!」
のび太は高層ビルの連なる一帯に向かい
屋上を見上げた…!
のび太「ここを上れば恐らく……!!」
153:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:07:26.40 ID:xxUFkxwt0
のび太「うおッ!?」
タケコプターで屋上へ向かう途中…
ビルの側面からクレーンのアームの様な小型の二又銛が飛び出し
のび太の腕に深く食い込んだ!
のび太「これは……!?どんどん突き進んで来るッ!?」
二又銛は腕の中を伝い
胴体に達しようとしていた…!
のび太「こ……このままじゃあ心臓に達してしまう……チャンバラ刀で腕を切り離すッ!!」ブチン!!
154:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:07:57.87 ID:xxUFkxwt0
切り離された腕が
ビルの屋上へとぐんぐん引き寄せられていく…!
のび太「……あれは釣り竿なのかッ!?ビルの壁から襲って来たって事は……『地中つりざお』か……!」
釣り上げられている腕を追っていけば屋上にいる敵
恐らく『少将』と対峙する事になるであろう……
のび太「あの腕に気を取られた一瞬がチャンス……奇襲だ…!」
のび太はがん錠を服用し
更にタケコプターのスピードを上げて上昇した
157:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:08:31.23 ID:xxUFkxwt0
ー高層ビル、屋上ー
謎の男「釣り上げたぜェェーーーッ!!………『腕』ッ!?」
のび太「かかったなッ!」
謎の男「えッ!?」
背後から飛び掛ったのび太が男の顔を勢い良く殴りつける
謎の男はそのまま高層ビルの屋上から放り出される形となった
謎の男「う、うわァァァァーーーッ!何をしやがるんだァァァァァーーーーーッ!!!」
160:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:09:38.89 ID:xxUFkxwt0
のび太「この高さから落ちたら即死だ……」
謎の男「オレが墜ちてもいいのかァァァーーーーーッ!オメーの腕はオレがァーーーーッ!!」
のび太「君が釣り上げていたこれかい?釣竿が緩んでいたから取り寄せバッグで返してもらったよ」
謎の男「そんな…うわァァーーーーーーーーーー……」ヒューン・・・
のび太「さてと『タイム風呂敷』で腕を治して………」キョロキョロ…
のび太「あった!『ドンブラ粉』…やはりここから散布したのか……」
のび太「……全て散布されてしまった……僕もみんなと一緒に救助して回らなければ……!!」
161:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:10:07.22 ID:xxUFkxwt0
のび太「――――――…!?」
謎の男「よくも突き落としてくれたなァァーーーーーーッ!!」
のび太「コイツッ!!空をとべるのかッ!?」
男はのび太が身構えるより先に胴体に組みかかり
ビルの屋上から飛び降りた!
謎の男「オメーもオレと同じ苦しみを味わえッ!!」
のび太「うわァッ!!」
164:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:10:58.19 ID:xxUFkxwt0
のび太〈――――僕ごと急降下して地面に叩きつけるつもりか……ッ!〉
謎の男「うおァァーーーーーーッ!!」
のび太「この体勢のまま地面に衝突したらお前もタダじゃあ済まないぞ……って聴こえてないか……ッ!」
のび太は腰に組まれた腕を無理やり引き剥がし
立て続けに拳を振り下ろした!
のび太「このォッ!」ゴシャア!
謎の男「げぇーーーーーーッ!!」ゴキベキバキッ!
のび太「一人で墜ちてろッ!」ボコォ!
謎の男「か…カハ………」ヒューン・・・
168:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:11:59.02 ID:xxUFkxwt0
のび太「ハァー……ハァー……体勢をとって……タケコプターで上昇を……ッ!」
タケコプターを装着し
上昇を試みようとしたその時である…
謎の男「うおおおおおーーーーーーッ!!」ギュォォォォ!!
下に叩き落されたはずの男は
再び上昇しのび太に掴みかかった…!
謎の男「へへへ……逃がさねェーーーーーーーッ!!」ガシッ
のび太〈ま……また上昇して僕に組みかかってきた……!〉
謎の男「いい加減一緒に墜ちやがれェェーーーッ!!」
170:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:12:23.57 ID:xxUFkxwt0
再びのび太を下にして両者は落下する
途中、謎の男の口元が不意に緩む…!
のび太〈何だ……奴の表情……一瞬だけど『自信』に満ちた…勝利を確信したような顔だった……!〉
のび太「落下方向に何かあるのか……?」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・・
のび太「うぉぉぉぉぉーーーッ!!?」
謎の男「へっへっへ……このあたりはビルが密集してるからなァーーーッ!!」
のび太が振り返った先に見えたのは
高層ビルの側面であった
171:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:12:51.26 ID:xxUFkxwt0
のび太〈い……いくら僕の体が鉄の硬度でも…この落下速度でビルの側面に叩きつけられたらタダじゃあすまないぞ…!!〉
のび太〈だが奴はなんだ…!?同じ状況の中、生身のくせに嬉々として突っ込もうとしている…!!〉
のび太〈とにかくパワーは僕の方が上なんだ……!奴だけビルに叩きつけて身を逸らすッ!!〉ギギギ…
謎の男「い、痛ぇッ!?さっきから腕のロックをほどく力が尋常じゃあ無いッ!?」
のび太「お前だけ壁に抱きついてろーーーッ!!」ドギャァ!!
謎の男「うわァァァァーーーッ!!」
173:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:13:23.82 ID:xxUFkxwt0
ザバァァァン!!
のび太「何だ――――――…!?」
本来なら渾身の力で殴られた事により
壁に叩きつけられるはずであった
しかし男は側面に激突すると
水面へ飛び込む様にビルの内部へと沈んでいったのである
のび太「ビルの壁が……まるで水のように奴を吸収した……!」
のび太「『ドンブラ粉』を自身にも塗っていたのか………!?」
175:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:13:54.89 ID:xxUFkxwt0
謎の男「少ォ~し違うんだなァこれが……!!」ユラァ~…
男がビルの側面から顔を覗かせる…!
謎の男「いつでも地の中を泳げる様にオレは『潜地服』を着ている……!!」
のび太〈『潜地服』か……では空を飛んだ道具は…………!〉
謎の男「そして……オレは『ソーナル錠』っていう道具も服用している……ッ!!」
のび太「…!!」
※ソーナル錠
一錠飲めば思い込んだとおりになる
服用者のみに効果があらわれる為、
竜巻等を発生させても現実の人々には一切影響が無い
179:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:14:20.76 ID:xxUFkxwt0
謎の男「そういや……その頭のやつで空を飛んでいるのか?」
のび太「……」
謎の男「そんな竹とんぼみたいな道具で空を飛べるんだから相当の馬力だろうなぁ……」
謎の男〈ならオレはジェット機だ……鋼鉄の……ジャンボジェット機……!〉
キィィ―――z___ン・・・
のび太「……!!!」
182:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:15:10.77 ID:xxUFkxwt0
ビルから超高速で発射された男の肉体は
一瞬でのび太の右腕ごと肩の周囲部分をもぎ取って行った……!
のび太「あぐぅ………!!!」ドバッ…
謎の男「オレの傷は治る……オレの骨は治る」シュウウウウ…
のび太〈……即死さえしなければ傷は治せるけど……こんなの何発も喰らいたくないね……!〉
謎の男「このままどんどん突っ込んでいくぜーーーーッ!!」
のび太「奴は結構遠くまで飛んだようだがあのスピードならすぐ戻ってくるだろう……移動するなら今しかない……!!」
185:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:15:42.97 ID:xxUFkxwt0
のび太〈空中戦に持ち込まれたら勝ち目は無い……かといって地上で戦えば『潜地服』を着ている奴に分がある……!!!〉
のび太「奴が逃げられず…尚且つあの突進攻撃の道筋が予測出来る絶好の場所は………!!!」キョロキョロ
のび太は遥か後方から走ってくる物体目掛けて
高度を落とした…
謎の男「あいつがどんどん下降していく……あれは……ッ!」
ブロオオオオオオオ・・・・・・
謎の男「新幹線ッ!通り過ぎようとしている新幹線に乗り込むつもりなのかッ!!」
のび太「『通り抜けフープ』……おじゃまするよッ!!!」
186:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:16:15.76 ID:xxUFkxwt0
ー新幹線、内部ー
のび太「都心部からどんどん離れていくけど……奴の目的は僕をおびき出して抹殺する事だ。嫌でも追跡してくるに違いない…!!」
のび太「この地の利を活かせばそのうち倒せるチャンスがやってくる……奴に一撃をぶち込むチャンスが……!!」
のび太「奴を捉えるには速度だ……速度を計算しなければ……!!」
のび太「新幹線のスピードを時速300キロとして……後ろから追って来る奴のスピードが時速800キロとすると……」
のび太「ここから目視する奴のスピードは……足し算すると時速1100キロ!!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・・
のび太「奴は…マッハを超えるのか…!!」
188:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:17:00.74 ID:xxUFkxwt0
のび太「い……いや、何を言ってるんだ僕は……奴は追いかける、僕は逃げる。単純に引き算じゃあないか……」
のび太「新幹線のスピードを時速300キロとして……外から追って来る奴のスピードが時速800キロとすると……」
えーん!えーん!
のび太〈いや………60で割って1分間に進む距離を割り出さないと……そしてこの新幹線の全長も……〉
うわああああん!
のび太「ええい!泣き声がうるさくて集中できない……」
195:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:18:40.89 ID:xxUFkxwt0
のび太「……新幹線の速度だけじゃなだめだな……内部で稲妻ソックスを着用した僕も走らないと……その場合目視できる奴のスピードは……」
うわああああん!うわああああん!
のび太「さっきから……子供にしてはやけに声が低いと思ったら大人も叫んでるのか……?」
のび太の視線の先には
駅員が四つん這いで床を這うように歩いていた
のび太「………何か落としたのかな?」
駅員「あー……」
のび太「………!?」
197:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:20:00.79 ID:xxUFkxwt0
のび太〈油断しすぎだよなぁ僕も……!〉
のび太はタイム風呂敷で頭を包んだ
のび太「……通りで簡単な計算にも頭が回らないわけだ……!」
駅員だけでは無い…!
のび太が席を見回すと
大人の者とは思えない振る舞いの乗客で溢れ返っていた……!
ある者は窓に顔を擦り付け、涎を垂らし
ある者は大声で泣き喚き、食べ散らかし…
乗客がまるで幼児の様に戯れているのである
199:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:21:00.06 ID:xxUFkxwt0
のび太〈始めに赤ん坊の泣き声がした席は………この車両の先頭付近……!〉ダッ!
のび太「!!」
のび太「やっぱりだ……赤ちゃんに『ハンディキャップ』が被せてある…………!」
※ハンディキャップ
周囲の人の知力および体力がこの帽子を被った者と同じレベルになる
のび太「はやく外さないと……周りの乗客にお漏らしまでされたらシャレにならないぞ……!」
205:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:21:45.91 ID:xxUFkxwt0
赤ん坊のキャップに手をかけようとしたその時…
のび太はその隣に座る乗客に殴りかかった!
のび太「『ハンディキャップ』の効果範囲は5メートルッ!!つまり5メートル内に唯一いるお前が仕掛けた事になるッ!!」
?「油断した隙に襲うつもりが……このトラップまで見破るとはやはり頭がいいな……だけどよォ~」
ボコォ・・・・・!!
のび太「き……効いていない……それどころかこっちの拳が……!」ミシミシミシ…
?「オレの身に着けている『安全カバー』はあらゆる攻撃を無効化するッ!」
207:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:22:30.57 ID:xxUFkxwt0
のび太は連結部分の貫通扉を開き、人のいない隣の車両へ移ると
とりよせバッグでハンディキャップを奪った…!
?「そんな道具まであんのか……」ガララララ・・・・
のび太「その手首に貼られたワッペン……もしかしてお前が『少将』なのか……!?」
少将「どうした?さっきまで外で戦っていた相手が少将だと勘違いでもしたのか?」
のび太「……!」
少将「残念だがアイツは『少尉』……お前がこの新幹線へ辿り着いたのも全てオレの計算の内ってわけだッ!」
212:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:24:06.07 ID:xxUFkxwt0
ガラララララ・・・
のび太〈貫通扉が開いた……あれは―――!〉
少尉「兄貴ィッ!計画通りだねッ!やっぱり兄貴はスゲェーやッ!」
少将「!?…ば…バカ野郎ッ!手筈が違…!」
少尉の突然の乱入により少将の気が紛れる…
のび太はその油断を逃さなかった!
のび太「ここはマグマの底!!」
少尉「マグマの……底…?」
217:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:24:42.36 ID:xxUFkxwt0
『ソーナル錠』により
服用者に思い込みの効果があらわれる……!
少尉「ギャアアァーーーーッ!!」ジュワアアア・・・・
少将「!?」
のび太〈今だッ!!〉ズァァ・・・!
220:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:25:22.98 ID:xxUFkxwt0
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・・
少将〈何だ……ッ!?奴は手袋を外して……オレに何を塗った…ッ!?〉
のび太は再び『安全カバー』で身を包んでいる
少将に殴りかかった!
のび太「……終わりだ!」ボコォッ!!
少将「おぅふッ!?」
ズシャァァ―――z___ッ!!
少尉「え?え?」
223:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:26:20.86 ID:xxUFkxwt0
少将「……ガハ……ッ!」
少尉「あ……兄貴は『安全カバー』で身を守っているのに何で……ッ!?」
のび太「この、全てが逆効果になる『あべこべクリーム』を塗ってやれば『無敵の鎧』は『最弱の鎧』へと成り下がる…!」
のび太「後は取り寄せバッグで海水を取り寄せ、僕の手についた『あべこべクリーム』を洗い落とせば……!」
のび太「今まで通りスーパー手袋を着用して存分に戦う事が出来る……!」
少尉「そ……そんなァァーー兄貴ーーッ!!」
少将〈まさか少尉がここまで頭の回らない奴だったとは……プラン変更だ……ッ!〉
228:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:27:08.25 ID:xxUFkxwt0
少尉「……オレが気を取らせちまったばっかりにッ!!こうなったら奴はオレが……!!」
少将「それ以上言うんじゃねーーッ!!」
少尉「ひ……ッ!」ビクッ!
のび太「……?」
少将「少尉よ……そういう言葉はオレたちの世界にねーんだぜ……そんな弱虫の使う言葉はな……」
少将「なぜなら、その言葉を頭に思い浮かべた時にはッ!」
少将「その時すでに行動は終わっているからだッ!!」
のび太「え――――――――――――」
少将は『独裁スイッチ』を押した…!
238:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:28:43.68 ID:xxUFkxwt0
少尉「……あいつが……消えた…ッ!?」
少将「………みたいだな」
少尉「は…ははは!やったね兄貴ッ!!」
少将「それよりよォー……なんでオメー直接ここへ来たんだ」
少尉「え?い、いや……下手に外から突撃して兄貴の『ハンディキャップ』作戦に巻き込まれたら俺まで溺れちまうかもしれないし……!」
少将「そうならねー様に『ソーナル錠』で思い込めばいいだろーがよォーーーッ!!」ドゴォ!
少尉「痛いッ!!何で殴るんだよォー兄貴ッ!もう戦いは終わって……!」
少将「これで本当に終わっていたらなッ!」
少尉「え……?」
247:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:30:51.62 ID:xxUFkxwt0
ゴトンゴトン・・・
少尉「ど……どういう事だよ兄貴……」
少将「……ボスとのび太って奴は以前に一度殺り合ったって言うぜ。妙じゃあねえか?」
少将「相手をボタンひとつで抹消するってんならよォー…最初に殺り合った時点でこの『独裁スイッチ』を押せば勝敗は決したもんだろ?」
少尉「ボスは自分の手で抹殺したかったとかじゃあ……」
250:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:31:34.64 ID:xxUFkxwt0
少将は手洗い場へ向かい
安全カバーに染み付いた『あべこべクリーム』を全て洗い流した…
少尉「もう戦いは終わったんだ……考えすぎですぜ兄貴……」
少将「いーや、まだ油断できねーな……今まで俺たち組織を引っ掻き回した相手が一瞬で、こんな簡単に事が運ぶわけがねぇ」
少尉「でも…ターゲットは消滅しちまいやしたぜ?」
少将「………」
254:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:32:50.82 ID:xxUFkxwt0
少将〈とりあえず……奴の落とした『あべこべクリーム』のケースの中身も全部水道に流しておくか………〉ジャー
駅員「すいませーん、切符拝見させてもらってよろしいですかー」
少尉「やべぇ…ど…どうする兄貴…」ヒソヒソ…
少将「おかしいなァー?切符ならさっき見せた筈なんだがなァーー」
少尉「そ…そうだぞ!オレも見せたッ!」
駅員「そうですか……」
駅員「嘘ついたら………針千本飲む事になりますよ」
少尉・少将「ッ!!?」
256:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:33:48.02 ID:xxUFkxwt0
少尉「あ……あがが…………」ズブズブズブ……
少将「おいバカ野郎ッ!!思い込むなよッ!?」
少尉「 」ブシュウウウ…
少将「……!!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・・
駅員は少将に対し
不敵に微笑みながら告げた…!
駅員「さぁ……戦いの続きだ……!」
261:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:34:49.91 ID:xxUFkxwt0
少将〈新手がいやがったのか――――ッ!!〉
駅員が帽子を脱ぎ、身構える…!
少将「……おめぇー…見たところ野比のび太の仲間だな……残念だが奴は抹消したぜッ!」
多目「……何を言っている?お前達は僕以外にも他の誰かを敵に回していたのか……?」
少将「あいつの仲間じゃあねーのか…ッ!?」
多目「僕は多目〈ため〉だ……とっくにご存知の筈だと思ったんだがな……!」
267:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:35:46.32 ID:xxUFkxwt0
多目は取り寄せバッグから
舞台用の照明を取り寄せた…!
少将〈あれはッ!さっき奴が『ハンディキャップ』を回収した時の能力じゃあ……ッ!?〉
多目「ライトアップッ!!」ガシャンッ!!
ピカァァァァァァーーーーーッ!!
少将〈むッ!眩しい―――――ッ!?〉
272:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:36:35.14 ID:xxUFkxwt0
少将の目が眩んでいる内に
追い討ちをかけるように多目が襲い掛かる!
少将「目暗ましをしたところで……『あべこべクリーム』の中身は全部捨てたッ!オメーにはオレを攻撃する術は無ぇーーッ!!」
多目「そうかい…ッ!」
少将は多目の一撃をかわすと
大きく間合いを取った
少将「く……ッ!?」ミシミシミシ……!
多目「骨の軋む音が聴こえた……やはり通じる……!」
279:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:37:55.03 ID:xxUFkxwt0
少将〈野郎……何をしやがったッ!?オレは『安全カバー』を着用しているし……今の攻撃もかわした筈だ……!〉
少将〈だがオレはダメージを受けた……奴が攻撃した先にあるのは………!〉
少将「……………ま……まさか……オレの影を攻撃して……ッ!?」
多目「さぁね………」
※影ふみオイル
このオイルを影に垂らし危害を加えると、影の持ち主に同様の痛みが伝わる
少将〈この多目って野郎…完全に道具を使いこなしていやがるッ!!〉
282:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:38:27.08 ID:xxUFkxwt0
少将〈そして読めてきたぞ……『独裁スイッチ』のデメリットッ!!〉
少将〈こいつは対象者の存在を完全に抹消するが……誰かがその人物の代わりを埋め合わせる事になるんだ…ッ!!〉
少将〈生易しいデメリットじゃあねーな……消したと思ったら見ず知らずの敵に不意撃ちを許し、少尉を犠牲にしちまった……!〉
少将「……ボスは自分でスイッチを使う事を恐れ、部下を使って道具を試したかった……という事か……」ジョキジョキジョキジョキ…
少将がハサミを取り出し自身の影を切り取り始める……
切り取られた影はムクムク膨れ上がると人間の様に動き始め、隣の車両へと駆け抜けて行った…!
少将「こうやってオレの影を他の車両へ逃がしてやれば……その間オレは無敵ってわけだッ!」
多目「『影切りばさみ』か……やはり少将相手となると一筋縄ではいかないようだ……!!」
285:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:39:15.97 ID:xxUFkxwt0
※影切りばさみ
人間の影をはさみで切り取ると、影の分身が出来る。分身は30分間だけ命令を聞いてくれる
少将「これで『安全カバー』の弱点は消えた……さぁどうするよ…!」
多目「解決策は無くもないさ……!!」
少将「ならよォー……やってみやがれーーーッ!!」
多目の腹部を目掛けて
少将の拳が放たれた!
288:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:40:34.53 ID:xxUFkxwt0
多目「へっへっへー…残念でしたー!」ジャ――z___ン!
少将「そ…その手にあるのは……ッ!?」
少将の繰り出した拳は
取り寄せバッグから覗かせている黒い物体に触れていた…
多目「『取り寄せバッグ』で君が隠している『影とり餅』を奪い…続いて逃げ出した君の影分身をとりよせた……!!」
少将「ま……まさかこれ程のやり手とは……ッ!!」
多目「君はこの影に触れた……よって影は再び君の元に戻る…ッ!!」
少将「うおおおおおおおおッ!?」ズズズズズズ・・・・・・
289:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:41:21.69 ID:xxUFkxwt0
多目「せっかく逃がした影分身も空しく……これでお前には再び弱点が出来たわけだ……」
少将「や…やろォ~…!」
多目「車内に照りつける太陽がお前の弱点を浮き彫りにしている内にケリを着ける……ッ!!」
少将「………どうやら現実はもっと残酷だった様だな……!」
多目「……!?」
多目の大きな誤算…!
新幹線がトンネルに入ってしまったのだ…!
少将「照りつける日差しも無くなったッ!蛍光灯だらけの車内に影は出来ないッ!!」
多目「くッ…!!」
291:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:42:07.55 ID:xxUFkxwt0
多目〈ならば『空気ピストル』で蛍光灯の一部を射る………!!〉
少将「先に言っておくけどよォー…蛍光灯は割れねーぜッ!!」
多目「!?」
少将「元々は『潜地服』を着た少尉が外から猛スピードで突っ込んでターゲットを車内で潰しちまう作戦だったんだぜ……?」
少将「この新幹線に乗り込んだ時から既にッ!!『材質変換機』でこの新幹線の全てを限りなく硬い材質に変えてあるッ!!」
多目「くっ……!」
少将「楽しい鬼ごっこの始まりだぜ……今度はテメーが逃げる番だけどよォーッ!!」
292:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:43:01.42 ID:xxUFkxwt0
少将「オラオラオラオラオラオラオラァッ!!」
少将の怒涛のラッシュ…!
多目も負けじと反撃を繰り出すも、少将の『安全カバー』は全てのダメージを遮断し
多目は徐々に車両の隅へと追い詰められていった…!
少将「追い詰めたぜェーーーーーッ!!死ねッ!!」
ゴシャアアッ!!
多目「……殴ったな……?」
少将の一撃が腹部に命中した瞬間……!
多目は真後ろにある貫通扉のノブを引き、もう片方の手でメガホンを構えて叫んだ
多目「『無生物催眠メガホン』ッ!この扉はホームドアッ!!」
293:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:43:47.71 ID:xxUFkxwt0
ドガァン!
少将「な…何ィィィッ!?」
多目が後ろの扉を開けたことにより
二人は新幹線からほの暗いトンネルに投げ出される形となった
多目「新幹線の中じゃあ明るすぎるから……トンネルに出ることにしたよ……!!」
多目「自分自身の影を良く見てみろッ!!」
少将「!?」
トンネルの僅かな照明によって映し出される少将の影…
その頭部分を新幹線の車輪が次々と轢いていく…!
少将「 」ブシュウウウウウウ・・・・・
多目「僕の……勝ちだ………」ドサッ・・・
296:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:45:15.64 ID:xxUFkxwt0
命を賭した最後の攻撃…!
多目はとうとう少将を撃破した
しかし、時速数百キロの乗り物から放り出され、地に叩きつけられた衝撃は
多目の肉体に深刻なダメージを与えていた…
多目〈おそらく僕はもう………助からない………〉
これまでの日々が走馬灯の様に頭の中をよぎる…
薄れゆく意識の中、最後に多目が思うこと
それは何も言わずに別れてきた両親のことではなかった
多目〈奴は……『野比のび太』を抹消したと言っていた………〉
多目〈存在を抹消する道具………独裁者を………懲らしめる道具…………〉
多目「もう腕もあがらないけど……バッグに手を突っ込むぐらいなら……」
297:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:46:26.12 ID:xxUFkxwt0
ゴトンゴトン・・・
のび太「―――――――――――……!?」
のび太は新幹線の中で意識を取り戻した…
のび太〈二人はどこへ行った…?いやそれよりも僕は確か………〉
バッグからデジタル時計を取り寄せ
のび太は時刻を確かめる……
のび太〈今日の日付は……8月8日……ッ!?〉
300:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:51:19.14 ID:xxUFkxwt0
多目は自分以外にも戦っている者の存在……
つまり自身がその人物の埋め合わせである可能性に気付き
死の直前、『上げ下げくり』を使う事で『独裁スイッチ』の効力が切れる頃まで日付を進めた…
自身が死に、本来戦っていた者が不在の間
敵組織に数日の猶予を与える結果になってしまうのを避けたかったからだ
多目の最期の抵抗…
それは、もう一人の戦う者に対するささやかな優しさであった
のび太〈戻ったときに襲われなかった点から察するに……少将は恐らく『僕の埋め合わせ』に敗れたと見ていいだろう…………〉
のび太〈僕は4日も無駄にしたのか……この4日間は埋め合わせが頑張ってくれていたのだろうか……………?〉
のび太〈それより…みんなは無事だろうか……ちゃんと家へ帰る事が出来たんだろうか……心配だ……〉
のび太は新幹線から抜け出し
タケコプターで都心部へ戻る事にした…
303:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/05/11(金) 21:54:11.37 ID:xxUFkxwt0
歯車がひとつ欠けたまま全ては元に戻り……
孤独な戦士は人知れず永い眠りにつく……
別の車両にいた乗客も、戦っていたのび太にも
勇敢に戦った彼の事など知る由も無いのであろう
だが、のび太にバトンを繋いだ彼は確かに存在したのだ……
ドラえもん「道具を使って本気で戦ったらどうなるかって?」【4】へ続く!
【 関 連 記 事 】