*・゜゚・*:.。..。.:*・゜ SS 総評 ・*:.。. .。.:*・゜゚・*
【まおゆー@管理人】
勇者の一人称で淡々と進んでいく様子は冒険を記した日記を読んでいるみたいだ。
切ない物語に、ものすごく引き込まれた。スレ内総100レスと短いが、ここまでの
クオリティを出せる作者の力量に脱帽。純粋にまた読みたいと思った。
1:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/08/22(月) 09:37:14.17 ID:EgLNYtwa0
雨が降る中、俺は街を歩いていた。
すれ違う人々が俺を指さし、口ぐちに「あれが負け犬だ」と言っているのが雨音の隙間を縫うようにして俺の耳に入ってくる。
反論するだけの余力はなかった。傷ついた鎧だけが人々の痛罵に反応するように軋み、虚無感を煽る。
兜から滴り落ちる水を眺め、奥歯を噛む。
三度、魔王と戦った。そして、俺は全ての仲間を失った。
魔王は圧倒的だった。俺や戦士の剣は魔王の衣服にすら届かず、魔法使いの炎や賢者の氷はその熱や冷気を伝えることすら叶わなかった。
ただ、絶望に立ち向かうだけの無意味な戦闘だった。
それでも魔王を倒すという使命、そして全人類の期待に応えなくてはいけなかった。
その結果がこれだ。雨の中、傘を差さず、守ってきたはずの人たちから批難を受ける。勇者のなれの果てには相応しいのかもしれない。
俺は人目を避けるように路地裏に入った。野良猫がゴミ箱を漁っている。俺もいつかあんな風になるのだろうかと考え、自然と笑みが漏れた。
情けない。そう呟いて歩こうとしたとき、ふと視線を感じた。
ゴミ箱の影に段ボールが敷かれていた。そして、その上には膝を抱えて俺を見つめる少女が座っていた。
「勇者様、拾ってください」
しばらく見つめあったあと、俺は少女の手を取った。
―――その日俺は、僧侶を拾った。