3:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:18:32.17 ID:nTLW7SIA0
チャララララ~ララ♪ パッパーパラララー♪
チャララララ~ララ♪ パッパーパーラララッ♪
チャッチャッ♪ チャチャチャ♪ チャッチャ♪ チャッチャ♪
チャッチャッ♪ チャチャチャ♪
チャチャチャチャチャチャチャチャチャーン♪ デンデケデンデンデケデン♪
御坂美琴
チャチャチャチャチャチャチャチャチャーン♪ デンゲケデケデケデデデン♪
白井黒子
チャチャチャチャチャチャ チャチャチャチャーン♪
初春飾利 佐天涙子
チャチャチャチャチャチャ チャチャチャチャーン♪
西村雅彦
デドッデドッデド♪ チャラララ~ チャラララララ♪ チャッチャッ チャッ チャチャチャン♪
5:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:20:37.12 ID:nTLW7SIA0
―午前0時03分 初春飾利 マンション自室前―
佐天「あ、あれ?」ガチャガチャ
佐天(なんで鍵がかかってるの?)
佐天「初春ぅーッ?」ピンポーン
佐天(何の音もしない……!? 電気は点いてるのに……)
佐天「どうしたの初春ッ!? 返事してッ!!」ピンポンピンポンピンポン!
佐天(そ、そうだ、携帯……)
プルルルルルル
佐天(出ない……!!)
佐天「初春ッ! 初春ッ!!!」ドンドンドンドン!!
ガチャッ
佐天「!?」
隣人「どうしたんですか……?」
佐天「実は友だちが……! 中に……! 何だか様子がおかしいんですッ!!」
隣人「わ、分かったわ! い、今、管理人さんを呼ぶから!」
6:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:22:39.29 ID:nTLW7SIA0
管理人「まったく……なんなの? こんな夜中に……」シュッ ピー
ピー カチャ
佐天「ういは……ッ!?」
ガチャン
佐天(チェーンがかかってる!? どうして!?)
佐天「初春! 返事して! どうしたの初春ッ!!」
佐天「……管理人さん、アンチスキルに連絡して下さい!」
管理人「あ、アンチスキルに……?」
佐天「友だちが中にいるはずなのに、返事がないんです!」
管理人「寝てるだけなんじゃないのぉ?」
佐天「私、ここに泊まってたんです。ちょっと外に出たら、その間にチェーンが……ッ!
それに、これだけ呼びかけてるのに起きないなんてありえません! 何かあったんです!」
佐天「嫌な予感がするんです! お願いしますッ!!」
8:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:24:41.80 ID:nTLW7SIA0
―午前0時16分 初春飾利 マンション自室前―
アンチスキルA「これで……よっ!」
バギンッ!
佐天「初春ッ!」ダッ
アンチスキルA「あ、ちょっと待ッ!」
佐天「きゃぁぁああああああああッ!!」
アンチスキルA「ッ!?」ダッ
9:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:26:45.32 ID:nTLW7SIA0
アンチスキルA「どうしたん……ッ!」
佐天「初春! 初春ぅぅうううッ!!」
初春「……」グッタリ
アンチスキルA「下がれ!」グイッ
アンチスキルA(失血、微量……呼吸……正常……脈拍もある……頭部以外目立った外傷無し)
佐天「初春は!? 初春は大丈夫なんですか!!」
アンチスキルA「ああ、平気だ。おそらく気絶してるだけだよ。命に別状はなさそうだ。
念のためこれから救急車を呼ぶ」
佐天「良かった……初春ぅ……」グスッ
12:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:28:51.03 ID:nTLW7SIA0
―同日 午後2時 同マンション廊下―
今泉「古畑さんの親戚に、学園都市の生徒がいるなんて、すごいなぁ! フヒヒッ!」
古畑「今泉君さぁ」
古畑「何でこんな所まで、ついてくるんだよ」ペチン!
今泉「ナニ言ってるんですか、昔は一緒に、オーストラリアまで行った仲じゃないですか!」
古畑「私はね、個人的に甥に会いに来ただけなんだよ? 何で君がついてくるんだよっ!
まったく……え~と、部屋の番号は……」
今泉「だって、学園都市、来てみたかったんだもん!」
古畑「? ……あれぇ? この部屋のはずなのに、表札が違うなぁ」
古畑「ん~? おっかしいなぁ~」
古畑「あれ~? ……あ」
今泉「ど、どうしたんですか、古畑さん」
古畑「ここ、甥のマンションじゃない」
13:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:31:02.14 ID:nTLW7SIA0
古畑「間違えちゃったよ~。どうしてくれるんだ」
今泉「ボ、ボクに言わないで下さいよ!」
古畑「そもそもこの地図がいけないんだよ! ホラこれ、分かりにくいんだよ
書き方がごちゃごちゃしてて」パシパシ
今泉「自分が迷ったくせに」
古畑「ん?」
今泉「ひっ!」
古畑「アレ……」
今泉「こ、今度はどうしたんですか?」
古畑「アレ。何かあったのかな」
15:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:33:06.11 ID:nTLW7SIA0
アンチスキルB「はい、こちらの捜査ももうすぐ終わります。
……いえ、大した成果は……はい、はい。分かりました。それでは」ピッ
古畑「あの~」
アンチスキルB「うわあっ!?」
古畑「何かあったんですか?」
アンチスキルB「あ、あなた一体!? あ、ちょ、ビニールテープから入ってきちゃだめです!
今ここはアンチスキル以外立ち入り禁止でぇ……!」
古畑「私、実は学園都市の『外』で刑事やってる者で、古畑と申します」
アンチスキルB「刑……事……?」
古畑「え~っと……あ。今泉君!」
今泉「はいっ」
古畑「警察手帳、見せてあげて」
今泉「は、ハイ!」ゴソゴソ…パッ
16:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:35:10.47 ID:nTLW7SIA0
アンチスキルB「で、でもですね……刑事といっても、
学園都市では我々アンチスキルが治安維持機構ですから……」
アンチスキルC「いいじゃん?」
アンチスキルB「は?」
アンチスキルC「ちょうど、手がかりが無くて困ってたところじゃん?
『外』の専門家の手を借りるのも手じゃん」
アンチスキルB「で、でも、黄泉川先生ッ……」
黄泉川「細かいことは言いっこなし、じゃん。
それじゃあ、後は任せたじゃん。刑事さん達に状況を説明してあげて」
アンチスキルB「よ、よみ……」
17:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:37:17.78 ID:nTLW7SIA0
古畑「いやぁ~、なかなか柔軟な思考の隊長さんですねぇ」
アンチスキルB「黄泉川というのですが……柔軟すぎるきらいがありまして……」
古畑「で? 一体、何があったんですか? えー……」
アンチスキルB「鉄装、鉄装綴里(てっそうつづり)です」
古畑「鉄装さん。えー……変わったお名前ですね~」
鉄装「名前負け、してるんですけどね……(´・ω・`)」
古畑「それで、鉄装さん……。一体、ここで、何が起きたんですか?」
鉄装「そ、それが! 女子中学生が変質者に、襲われたんですっ!」
古畑「ふ~む……。もっと、詳しくお願いできますか?」
18:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:39:19.85 ID:nTLW7SIA0
鉄装「えぇと、事件が起きたのは、昨日の午後11時50分頃です。被害者の名前は初春飾利、中学一年生。
チャイムの音が聞こえたので、友人かと思ってドアを開けたらガンッと頭に一撃を。
幸いにも傷は浅く、他にも目立った外傷はありませんでしたし、着衣も乱れていませんでした」
古畑「ちょっとタンマ」
鉄装「はい?」
古畑「友人?」
鉄装「は、はい。当日、ここに被害者の友人が一人、泊まりに来ていました」
古畑「う~ん……」
鉄装「どうしたんですか?」
古畑「あ、ちょっと不思議に思ったものですから」
鉄装「何がです?」
古畑「いくら治安が良いとはいえ、そんな真夜中に友だちの家に泊まりに来る中学生がいるでしょうか」
19:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:41:56.41 ID:nTLW7SIA0
鉄装「あ、そんなことでしたか。それなら簡単です。被害者の友人、佐天涙子という同級生なのですが。
夕方からずっと一緒で、昨日は前もってここに泊まることになっていたらしいんです」
鉄装「夜中に外に出たのは、被害者が急に熱を出したためで、
佐天涙子は、ドラッグストアまで風邪薬を買いに行っていたんです。それで、11時45分頃、いったん外に。
あ、時間は、本人が確認しています。たまたま時計が目に入ったそうで」
古畑「なるほど、それで?」
鉄装「被害者の証言では、そのおよそ5分後……玄関のチャイムが鳴ったそうです。
おそらく、佐天涙子が帰ってきたと思ったんでしょうね。
鉄装「被害者は真夜中だというのに不用心にドアを開けた。で、そこをガツンとやられたそうです。
被害者は、よろめきながらベッドに倒れ込み、そこで気絶しました」
鉄装「それから15分後、佐天涙子が部屋に帰ってくると、ドアには鍵がかかっていました。
何度呼びかけても応答がなかったため、佐天涙子は、騒ぎで起きた隣人に管理人を呼んでもらうよう頼んでいます。
しかし、管理人がマスターキーで部屋の鍵を外すと、今度はチェーンロックがかかっていた」
20:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:44:16.44 ID:nTLW7SIA0
鉄装「被害者はチェーンロックをする習慣がなかったそうです。
ただ事じゃないと直感した佐天涙子は、管理人にアンチスキルに通報を要請。
鉄装「これが、0時10分頃のことです。そしてその約5分後、たまたま近くにいた
アンチスキルが現場に到着し、持っていた装備でロックを解錠」
鉄装「そして、そこのベッドに倒れていた被害者を、佐天涙子が発見した――
これが、事件の大まかなあらましです」
古畑「なるほど。よく分かりました」
鉄装「あ、そうだ。あと、これは大した問題ではないのですが……。一応」
古畑「?」
鉄装「部屋は、完っ全に密室状態でした」
古畑「密室……!?」
22:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:46:54.50 ID:nTLW7SIA0
鉄装「ドアには、内側から鍵とチェーンがかけられ、ベランダに至る窓にも、しっかりと鍵が。
それ以外に、この部屋に、人の出入りできる場所はありません。完全な密室です」
古畑「……」
鉄装「古畑さん? どうされました?」
古畑「え~、ふつうに考えるとですね、その状況はかなり『大した問題』だと思うのですが……」
鉄装「完全密室がですか?」
古畑「はい」
鉄装「古畑さん、ここは学園都市、超能力者の育成施設ですよ?
『空間移動』、つまりテレポート能力を持つ者もたくさんいます」
古畑「て、テレポート……?」
鉄装「おそらく犯人は、被害者を殴った後、ドアに鍵を閉め、チェーンをかけて
テレポートしたんでしょうね!」
23:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:49:53.15 ID:nTLW7SIA0
古畑「え~、その、テレポートというのは、自分以外の物を移動させることも?」
鉄装「能力のレベルによります。『レベル』が低いと、自分しか移動できなかったりします。
被害者を連れ去ってないことから、今回の犯人はそんなタイプだったのかと思います」
古畑「なるほど、それならある程度、筋は通りますねぇ」
鉄装「ある程度?」
古畑「犯人はおそらく何らかの能力を使って密室を作りだした。これはおそらく間違いないでしょう。
しかし、犯人は、ただの変質者ではありません」
鉄装「な、なぜ……ですか……?」
古畑「さっき言いましたね、鉄装さん。被害者は、
『傷は浅く、他にも目立った外傷はなかった』、『着衣の乱れもなかった』、と」
鉄装「そりゃ、まず頭を殴って、それから……、いやらしいことをするつもりだったんでしょう。
しかし、そこに思いがけず佐天涙子が……」
古畑「いいえ、あり得ません。佐天涙子が出かけたのが11時45分、その5分後に犯人は現れています」
24:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:52:52.96 ID:nTLW7SIA0
古畑「佐天涙子と入れ違えるように犯人が現れ、それからアンチスキルがドアのチェーンを切るまで
ほぼ30分近くの時間があります。その間、誰もこの部屋には入ってこれなかった」
古畑「充分な時間があったはずです。しかしぃ? 犯人は被害者にそれ以上何もしていません……」
古畑「それにこの部屋、たしかに誰かが不自然に散らかした後があります……。
しかしですね、よく見ると、タンスやクローゼット、机、棚は閉じられたままなんです。
古畑「変質者なら、タンスのひとつでも荒らすのがふつうでしょう。
同様に、ただの物取りとも考えられません」
古畑「それに、もっとミョーなことがあるんですよ……」
鉄装「ミ、ミョーなこと?」
古畑「今泉君ちょっと」
今泉「ハイッ!」
26:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:55:01.80 ID:nTLW7SIA0
古畑「玄関口に立ってくれる? そう、そこ。今泉君、被害者役やって」
古畑「いいですか? 私、犯人です」
古畑「まず犯人は、チャイムを鳴らします。ピンポーン。
そして、被害者がドアを開けます。
ほら、ドア開けるフリして。
古畑「で、私は被害者の頭に鈍器を振りおろします。えいっ!
で、被害者はベッドの方に逃げ……そこで気絶します。
はい、今泉君、フラフラしながら逃げて」
古畑「はいそこでストップ!」
古畑「……気づきませんかぁ?」
鉄装「ど、どういうことでしょう……。わ、私にはさっぱり……」
28:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:57:13.66 ID:nTLW7SIA0
古畑「どうして犯人は、よろめく被害者にもう一撃加えなかったんでしょうか……」
鉄装「そ、そりゃあ、命を奪う気が無かったんでしょう」
古畑「えぇ? それはおかしいですよ~?
鉄装さん、さっき自分でおっしゃったじゃないですか!
ここは学園都市です。相手が能力を使って反撃してくるかもしれないんですよ?
即座に気絶させなければ自分が危険です」
古畑「今、被害者は後ろを犯人に後ろをみせて、よろめいています。
今なら、軽くもう一撃加えれば、簡単に相手は気絶します!
そう! 確実に気絶させるチャンスが犯人にはあった!」
古畑「もし私が犯人なら、このタイミングで殴ります。こんな風に」ゴッ
今泉「痛あッ! 本当に殴らないで下さいよ古畑さん!」
古畑「どうして、犯人は、こんなチャンスをみすみす逃したのか……」
31:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 21:59:35.69 ID:nTLW7SIA0
古畑「つまりですね、犯人は初春さんを殴って、部屋を散らかしただけで、
何もせずにただ立ち去ってるんです。
もしこれが通り魔的な犯罪なら、どう考えてもミョーです」
鉄装「じゃ、じゃあ、どういうことなんですかっ!?」
古畑「犯人は……初春さんを知っているんじゃないでしょうか」
鉄装「え、ええぇぇっ!?」
古畑「初春さんの能力は、何なんですか?」
鉄装「た、たしか……レベル1の『定温保存(サーマルハンド)』という名前で……。
触れている物体の温度を一定に保つ能力です」
古畑「ん~……犯人は知っていたんじゃないでしょうか……。
相手が自分を圧倒する能力を持っていないことを!」
33:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:02:23.50 ID:nTLW7SIA0
鉄装「それじゃあ犯人は、被害者の……知人……?」
古畑「一方的に知っているだけなのか……、それとも、知り合いなのかはわかりません。
ただ、そう考えると、もうひとつ疑問が解けるんです」
鉄装「もうひとつの……疑問、ですか?」
古畑「犯人が、チャイムを使った理由です。
さっきお話しをうかがったとき、引っかかったんですよね~……。
もし犯人がテレポートの能力を使えるのなら、どうして、部屋の中に直接入りこまなかったのか……って」
古畑「しかし、もし犯人が被害者と知り合いだったとしたら、これは不思議ではなくなります。
知人なら、部屋の中にいきなり現れるなんて失礼なことはしないでしょうからね」
鉄装「なるほど! たしかに……! 『親しき仲にも礼儀あり』ですねっ!」
古畑「逆恨みということもありますから、必ずしも被害者と親しい人物とは限りません。
ただ、今のところその辺りが一番ありえると思いますよ~」
鉄装「さ、さすが刑事さん……! いつもドンパチやってばっかりの我々とは違いますね!」
古畑「いえ~、フフフ、『外』の警察も、充分ドンパチやってますよぉ。
私は主に頭脳労働の方が得意でして……フフ」
37:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:06:00.87 ID:nTLW7SIA0
~十分後~
古畑「今泉君、何かめぼしい物見つかった?」
今泉「いいえ!」
古畑「ん~、特に犯人に繋がるような物は見つかりませんね~」
鉄装「やはりそうですか……」
古畑「アンチスキルの方でも?」
鉄装「ええ……くまなく捜査したんですが……。いっさい、見つけていないんです」
古畑「何も?」
鉄装「はい……。凶器も、指紋も、何も残っていませんでした」
古畑「ん~……、不審な人物を目撃したという人は?」
鉄装「一応、付近の住民に聞き込みはしましたが……収穫はゼロでした」
古畑「誰も、不審人物を見ていない……」
鉄装「現場の外……そこのベランダから駐車場が見えるでしょう?
事件当夜、佐天涙子たちが部屋に入ったとき、もうひとりアンチスキルが車で待機していたんですが、
その彼も、怪しい人間は見ていないとのことでした」
38:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:08:19.83 ID:nTLW7SIA0
古畑「え~……、被害者の初春飾利さんは、今どこに……?」
鉄装「もう回復してますが、念のため病院で精密検査を受けてます。
あ、話をしたいとおっしゃるなら、これからその病院までお送りましょうか」
古畑「あ、いえいえ、とんでもないとんでもない」
鉄装「いいんですよ。貴重なご意見をもらえましたからっ!」
古畑「そうですか、じゃあ~、お言葉に甘えて。ありがとうございます」
古畑「あの~、鉄装さん。ちなみに……佐天涙子さんの方はどうなってますか?」
鉄装「今、アンチスキルの方で事情聴取をしています。
もし、彼女の話を直接聞きたいのであれば、それが終わってからですね」
古畑「すみませんが、それが終わったらご一報いただけますか?」
鉄装「ええ、分かりました。あ、佐天涙子について、今分かっている情報だけでも
お伝えした方がよろしいでしょうか」
古畑「ええ是非。……それでは、参りましょう、鉄装さん」
鉄装「はいっ!」
40:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:10:26.53 ID:nTLW7SIA0
―同日 午後3時 学園都市内 某病院病室―
鉄装「この部屋が、初春飾利さんが入院している部屋です」
ガラッ
古畑「どうも~、失礼します~」
黒子・美琴・初春「!?」
美琴「ど、どちらさま……ですか……?」
古畑「あ、どうも、私、刑事の古畑と申します。はじめまして」
黒子「刑事……? アンチスキルではなく……どうして学園都市外の機構が……?」
鉄装「こちら、『外』では優秀な刑事さんだそうで。
この事件の捜査に、一時的にご協力をお願いしてるんです」
古畑「いや~、優秀なんて、フフフ」
黒子「な~んか胡散臭いですわね……」
42:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:12:33.93 ID:nTLW7SIA0
鉄装「それでは、私はこれで」
古畑「どうもありがとうございました」
鉄装「すみませんがみなさん、古畑さんにご協力をお願いします」
黒子・美琴・初春「はい」
古畑「療養中すみませ~ん。え~、あなたが、初春飾利さん」
初春「は、はい!」
古畑「昨日は大変でしたね~。怖かったでしょう。お察しします」
初春「いえ、こういうのには、慣れますから」
古畑「慣れている?」
初春「一応、私、『風紀委員(ジャッジメント)』ですから」
古畑「ジャッジメン……ト……?」
今泉「……古畑さん! 知らないんですか!
学園都市にある、学生による治安維持機関ですよっ!」
43:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:14:42.38 ID:nTLW7SIA0
古畑「何で君が知ってるの」
今泉「……」ガサゴソ……バッ
古畑「なになに……『学園都市完全ガイド』……?」
古畑「……」ペチンッ!
今泉「痛ッ! 何で叩くんですか!」
古畑「それくらい知ってるよ。忘れてただけだよ、口はさむな」
黒子・美琴・初春「……ふふ、あははは」
古畑「すみません、こいつのことは無視して下さい」
今泉「ひどいなあ! 人がせっかく教えてあげたのに」
美琴「あはは、古畑さんって面白い人ですね」
46:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:16:52.21 ID:nTLW7SIA0
古畑「ウフフフ。お二人は初春さんのお友だちで?」
美琴「はい、御坂美琴です。常盤台中学の2年生です」
古畑「で、そちらが」
黒子「白井黒子です。お姉様と同じく、常盤台中学、1年生ですわ。
ちなみに、わたくしも初春と同じく、ジャッジメントですの」
今泉「古畑さん……、古畑さん! 常盤台中学っていったら、
学園都市でも、お嬢様学校で通ってる超、有名学校ですよ!
何だかうれしいなあ!」
古畑「それはすごい!」
美琴「そんな大した物じゃないですよ」
古畑「で、みなさん、能力レベルは高くていらっしゃる」
美琴・黒子「え?」
古畑「いえ、だってそうじゃないですか? 超有名学校なら、当然能力のレベルが
高い人間が集まるはずです……フフ」
美琴「た、たしかに……。常盤台はレベル3以上でなければ入学は無理です」
47:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:18:56.95 ID:nTLW7SIA0
古畑「え~、もしさしつかえなければ、お二人の能力を教えてもらえないでしょうか」
今泉「ボ、ボクも知りたいなぁ!」
美琴「私は、『電撃使い(エレクトロマスター)』、レベル5です」
今泉「レベル5!?」
古畑「『電撃使い(エレクトロマスター)』というのは?」
黒子「お姉様はこの学園都市に7人しかいない、レベル5の能力者であり、学園都市230万人の頂点に立つお方ですの!
分類で言えば発電系ですが、単に電流を操るだけでなく、『電』と名のつく物理現象は大抵操り、応用力も多彩です。
例えば――」
美琴「ま、まあ、電気を操る力ってことで」
古畑「しかし……いや~凄いですね。レベル5とは!」
今泉「か、感動だなぁ~。こんな所でレベル5に会えるなんて!
あ、握手、握手して下さい!」
古畑「やめなさい! こら! ……どうもすみません、フフ」
49:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:21:54.18 ID:nTLW7SIA0
古畑「そして、白井さん、あなたは」
黒子「わたくしは、『空間移動(テレポート)』、レベル4ですわ」
古畑「……テレポート……」
今泉「うわぁ、古畑さん、今度はテレポートですよ!
あの、ボクをテレポートさせたりとか、できるんですか!?」
古畑「……」
黒子「ええ、まぁ」
古畑「え~、白井さん……お願いがあるんですが……」
黒子「なんですの、古畑さん? あらたまって」
古畑「こいつのお願いを聞いてもらないでしょうか」
今泉「え?」
古畑「前から、テレポートで遠くに行きたい行きたいって、念仏みたいに言ってまして」
50:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:24:27.38 ID:nTLW7SIA0
黒子「ええ、それは構いませんけれど……どこに飛ばしたらいいんですの?」
古畑「適当な場所で構いません、フフ」
今泉「え? え?」
黒子「じゃあ……適当に」
今泉「ちょ、まっ、古畑さ」
ヒュン!
古畑「凄い! 本当に消えちゃいました!」
黒子「まぁ、これがレベル4の力ですわ」
古畑「テレポート、本当に凄い力ですねぇ。これはアレですか、
相手に触れないと、テレポートさせられないんですか?」
黒子「ええ、わたくしの場合は」
古畑「では、一度に移動できる距離は?」
黒子「80メートルくらいですわね」
51:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:26:33.34 ID:nTLW7SIA0
古畑「誰かと一緒にテレポートしたりとか」
黒子「もちろんできますわ。自分も含めて、だいたい130キロの質量の物という制限はつきますが」
黒子「……古畑さん」
古畑「はい?」
黒子「ずいぶんとテレポートにご興味がおありなんですのね」
古畑「え~、実はですね……今回初春さんを襲った犯人なのですが……、
テレポートの能力を持っている可能性が高いんです」
黒子・美琴・初春「ええっ!?」
美琴「ど、どうしてですか?」
初春「し、失礼ですが古畑さん、この学園都市には多種多様な能力者がいます。
能力は、『空間移動(テレポート)』に限定はできないと思いますっ!」
黒子「初春の言うとおりですわね。犯行にテレポートが使われたという証拠でも?」
57:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:31:43.06 ID:nTLW7SIA0
美琴「え~っと、まず、ベランダから外に出ます。それで、磁力を操作して外側から鍵をかけて……
磁場を利用して、壁を足場にして地面に下ります。
これで、現場を密室にしたまま、逃げることができます」
黒子「まぁ、お姉様でなくとも、磁力と磁場を操る能力者なら、充分逃走が可能ということですわね」
古畑「フフ……」
美琴「古畑さん?」
古畑「もちろん、そう考えてもみたのですが~……それはありえません」
初春「どういうことですか?」
古畑「事件当夜、ベランダの向かいにある駐車場で、アンチスキルが待機してるんですよ。
壁を伝って逃げたのなら、彼に目撃されていなければならない。
しかしぃ? 彼はマンションの壁に貼りついた人間は、見ていません」
美琴「……そう、なんですか」
59:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:34:32.13 ID:nTLW7SIA0
美琴「じゃあ、アンチスキルが来る前に逃げたとは考えられませんか?」
古畑「考えられません。なぜなら、アンチスキルが到着したときに、まだ犯人は部屋の中にいたからです」
黒子「どうしてそんなことが分かりますの!?」
古畑「部屋にかけつけたアンチスキルの証言です。アンチスキルが部屋に到着し、
ドアを開ける寸前に、部屋の灯りが消えているんです。
ちなみに初春さん、そのとき部屋の灯り、消しましたか?」
美琴「初春さんは、気を失っていましたんですよ、そんなことできるはずが……」
古畑「そうなんです。初春さんに灯りは消せません。とすれば、犯人はアンチスキルが
チェーンロックを外す直前まで部屋の『中』にいたことになります」
初春「……」
古畑「それから、もうひとつあるんですよ~。犯人が磁力使いでない証拠が」
黒子「そ、それはなんですの?」
60:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:37:37.51 ID:nTLW7SIA0
古畑「学園都市には、監視カメラが設置されているそうですね。
……実は事件当夜、偶然、カメラが初春さんのマンションをとらえているんです」
美琴「偶然、ってどういうことですか?」
古畑「そのカメラ、ふだんは別の場所を映しているそうなのですが、
あの晩は機械にトラブルがあったようで、明後日の方向を向いていたんです。
それが……」
初春「私のベランダ、ですか?」
古畑「遠くから映していたため、残念ながら部屋の内部までは見えませんでした。
しかし、はっきりしたのは、あの晩、5階にあるベランダから壁を伝って下に逃げた人間は
いなかった、ということです」
美琴「で、でも、窓からじゃなくても、ドアから出たかもしれないじゃないですか。
磁力を使ってチェーンロックをかけて、ドアにも電子干渉で鍵を――」
古畑「フフフ……御坂さん、それはレベル5の『電撃使い(エレクトロマスター)』である、
あなたにかできない芸当です」
美琴「あ……」
61:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:40:43.36 ID:nTLW7SIA0
黒子「ふ、古畑さん! お姉様が犯人だとおっしゃるおつもりですか!」
古畑「いいえ。いくらレベル5の能力者でも、誰にも目撃されずに初春さんの部屋の灯りだけを
消すなどという器用なことは不可能です。違いますか? 御坂さん」
美琴「……難しいと、思います。ブレーカーごと落とすなら、なんとかなるかもしれませんけど……」
古畑「残念ですが~……、ブレーカーは落ちていませんでした」
初春「じゃあ、こんなのはどうでしょうか。犯人は光学系の能力者で、部屋に隠れていた、とか」
黒子「そ、そうですわ! 犯人はきっと、逃げたと見せかけて部屋の中にいたんです。
そして、アンチスキルと佐天さんが、気絶した初春に気を取られている隙に、部屋から出た。
こう考えれば問題ありませんわ!」
古畑「フフフ……問題、あると思いますよ~」
黒子「ど、どうしてですの!?」
64:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:43:16.45 ID:nTLW7SIA0
古畑「ヒントは、部屋の間取りです」
黒子「間取り?」
古畑「初春さんが倒れていたベッドは、比較的玄関に近い位置にありました。
佐天さんとアンチスキルが部屋に入った後に透明人間がドアから出たとしたら、
当然、ドアが開く音がするはずなんです
――犯人が部屋から出るための、ドアの開閉音が……!」
古畑「あのとき、アンチスキルは初春さんの呼吸や脈拍を確認していました。
佐天さんは固唾を飲んでそれを見守っています。現場は、まったく無音でした。
そんな状態でドアがガチャリと開けば、すぐに犯人の存在はバレます」
古畑「え~、しかもですね、ドアのすぐ外にはマンションの管理人さんがいました。
面倒なので、中に入らずに外で待っていたそうです。彼女も証言しています。
佐天さんとアンチスキルが部屋に入ってから、ドアは一度も開いていない、と」
古畑「いかがでしょうか~?」
黒子「少しよろしいかしら」
古畑「はい?」
黒子「その推理、ひとつ穴がありましてよ」
67:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:45:20.98 ID:nTLW7SIA0
古畑「穴、と言いますと?」
黒子「犯人は、ほとぼりがさめるまで、部屋のどこかに身を隠していたかもしれないじゃないですか。
そして、隙を見て玄関から脱出する。いかがですか?」
古畑「ん~、それもありえないと思いますよ」
黒子「な、なぜですの……?」
古畑「アンチスキルは、現場の状況から、まず真っ先に犯人が室内に隠れていると疑いを持ちました。
そして、現場をくまなく捜索しているんです。
初春さんの部屋ですが、人ひとり隠れるスペースは多くありません」
黒子「姿を消して、部屋中を逃げ回っていたかもしれませんわ」
古畑「佐天さんは、アンチスキル以外に、人が部屋を歩き回る『音』を聞いていません」
古畑「能力というのはひとりにつき一種類です。光学系の能力者が、
床を踏みならす音を消すことは、できない……。お分かりですね? フフフ……」
71:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:47:22.62 ID:nTLW7SIA0
古畑「そうなんです。現場の状況を分析する限り、犯人の能力はテレポートであると
考えるのが一番自然なんです……!」
古畑「そして……もうひとつ。
能力以外に、犯人について、大~きな手がかりが」
美琴「手がかり?」
初春「何なんですか!?」
古畑「はい。犯人は初春さんを、個人的に知っている人物で、おそらく女性です」
美琴「なっ……! どういうことですかッ!?」
古畑「現場は確かに荒らされていました。しかし、犯人は金目の物どころか
タンスやクローゼットにすら手をつけていません。
これらの事実から、物取りであるという可能性は消えます」
古畑「また、初春さんにもいっさい手を出していません。
これで、通り魔的な変質者だという線も消えまし、た!」
73:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:50:10.62 ID:nTLW7SIA0
古畑「犯人の狙い……それは最初から――」
初春「私……ですか?」
古畑「そう考えるのがもっとも自然でしょう。犯人はあなたに個人的な恨みを抱いていた。
だから、あなたの家を訪ね、出てきたあなたを鈍器で殴りつけた!」
古畑「あなたはすぐに気絶せず、よろめきながらベッドまで歩き、そこで気絶しています。
ここにはふたつ! 重要な点があります。
まずひとつ目。
古畑「ふつうの強盗なら、被害者をすぐに追撃します。相手が未知の能力で反撃してくるかもしれないからです。
なぜ、犯人はすぐに追い打ちをしなかったのか……!」
美琴「……そうか、初春さんのレベルを知っていたから犯人は……!」
古畑「注目すべき点ふたつ目。
それは、一撃で初春さんを気絶させられなかったという事実、です。
鈍器が特定されていないのではっきりとは言えませんが、腕力の弱い女性が殴ったのなら、
一撃で気絶しなくても不自然ではありません」
古畑「つまりですね、犯人は初春さんを知っている、テレポート使いの女性……ということになります。
……え~、お心当たりありませんか?」
黒子「……古畑さん」
76:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:52:19.25 ID:nTLW7SIA0
黒子「わたくしのこと、疑ってらっしゃいますの?」
古畑「え? え? 私が? 白井さんを? とんでもない!」
黒子「……それならよろしいのですけど」
古畑「え~、初春さん」
初春「は、はい」
古畑「アンチスキルの方からうかがいました。頭を打ったショックで、事件のことを
ほとんど忘れているそうですね」
初春「はい……頭を叩かれた前後のことはほとんど記憶がなくて」
古畑「今の情報を元に、断片的にでも、何か思い出せないでしょうか……」
初春「そうですね……う~ん……」
初春「……」
初春「……すみません……やっぱり……何も……」
古畑「……そうです、か……」
初春「すみません……」
古畑「いえいえ! こちらこそ療養中にこんなことをお願いしてすみませんでした」
81:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:54:24.95 ID:nTLW7SIA0
古畑「え~、これはもののついで、というやつなんですが、御坂さん、白井さん」
美琴・黒子「?」
古畑「昨日の午後11時30分から午前0時30分までの一時間、どこにいらっしゃいましたか?」
美琴「ちょっ! どういうことですか、古畑さん!?」
黒子「そうですわ! わたくしたちのどちらかが犯人だとでも!?」
初春「そうですよ、古畑さん! お二人は絶対そんなことしません!」
古畑「いえいえ、そんな! あくまで形式的な物です。あっちの警察ではこういう
義務みたいなものが~……ありまして」
美琴「……そういうことなら……分かりました。……私は……寮で……寝てたと思います」
黒子「わたくしもですわ」
古畑「それを証明できる人は」
美琴「いません。私たち、一緒の部屋なんですけど、二人ともその時間には……寝てましたから」
古畑「そう、ですか……分かりました。どうも、ご協力ありがとうございます」
82:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:56:25.94 ID:nTLW7SIA0
古畑「さて、それでは私はこの辺りで……。初春さん、ゆっくり、お休みになって下さい」
初春「ありがとうございます。……お優しいんですね、古畑さん」
古畑「フフフ、ありがとうございます」
美琴「黒子、私たちも行こっか」
黒子「そうですわね」
美琴「じゃあね、初春さん。また来るから」
初春「はい、今日はわざわざありがとうございました」
黒子「看護師さんにご迷惑をかけてはいけませんよ、初春」
初春「かけませんよっ!」
83:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 22:58:29.83 ID:nTLW7SIA0
―同日 午後4時 学園都市内 某病院廊下―
古畑「初春さんとのお付き合いは長いんですか?」
美琴「ええ」
黒子「何度も死線をくぐりぬけた仲ですの」
古畑「フフ、いわゆる~、『戦友』というやつですね」
黒子「そう言ってもさしつかえありませんわ」
美琴「古畑さん」
古畑「はい」
美琴「犯人、必ず捕まえて下さいね」
古畑「もちろんです」
黒子「学園都市の外の刑事さんに何かできるとは思えませんけれど」
美琴「こら、黒子!」
古畑「フフフ……、え~、私、自分で言うのもなんですが、フフ、今まで担当した事件で
未解決の物は一件もないんです」
86:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 23:00:35.27 ID:nTLW7SIA0
黒子「しかし、ここは学園都市。能力者の犯罪は初めてでしょう?」
古畑「はい。しかしですね、能力者も人間です。同じ人間が作った謎なら、人間に解けない道理はありません」
黒子「すごい自信ですこと」
今泉「古畑さ~ん!」
美琴「あ、今泉さん」
今泉「古畑さん! ひどいじゃないですか! 誰がテレポートで飛ばしてくれなんて言ったんですか!
おかげで途方にくれましたよ!」
古畑「よく戻ってこれたね」
今泉「上条君っていう親切な少年に連れてきてもらったんです」
美琴「上……条?」
今泉「ボクと同じく不幸体質で、すっかり意気投合しちゃったっ!」
美琴「あンの野郎ォッ!」ダッ
黒子「お、お姉様!? どこへいらっしゃいますの!?」
87:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 23:02:51.12 ID:nTLW7SIA0
黒子「まったくもう……」
古畑「ずいぶんと息巻いてましたね~。どこに行かれたんでしょう」
黒子「上条、とおっしゃいましたわね、今泉さん」
今泉「え、あ、はい」
黒子「おそらく上条なんたらという学生のところでしょう。お姉様に近づくケダモノですわ」
古畑「フフ……、御坂さんならそういう人は多いでしょうね」
今泉「あ、あの、上条君は、あまりにも不幸を呼びよせるんでぇ、『疫病神』って言われてたんですよ。
暴漢に殺されかけたり、マスコミのさらし者になったり。
ボク、何か他人とは思えなくて」
黒子「……い、今泉さんなら何となく想像がつきますわ……」
今泉「そうなんですよ! ボクも殺人犯にされかけたり、
爆弾の仕掛けられた観覧車に閉じこめられたり、
美術クラブのオークションで買った125万円の仏像が割られたり……っ!」
90:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 23:04:53.59 ID:nTLW7SIA0
黒子「は……ははは……」
古畑「ンフフ、えー、気にしないで下さい」
黒子「では、わたくしもこれで」
古畑「御坂さんによろしくお伝え下さい」
黒子「ええ、かしこまりましたわ」
古畑「……あ」
古畑「あ! すみません! 白井さん、ちょっと!」
黒子「……なんですの? もうお帰りになるのではなかったのですか?」
古畑「もうひとつだけ、よろしいでしょうか~。
いえ、少し……気になっていたことを思い出しまして……」
黒子「……ふぅ……。なんですの? できれば、手短かにお願いしたいですわね」
古畑「大丈夫、すぐに終わります」
91:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 23:06:57.92 ID:nTLW7SIA0
古畑「実はですね~……白井さんに是非、アドバイスをいただきたいことが」
黒子「わたくしにですか?」
古畑「レベル4のテレポート能力者である、あなたなら何か分かるのではないか、と思いまして」
黒子「もったいぶりますわね。何なんですの?」
古畑「はい……、この事件、おそらく犯人はテレポート使いです。
しかし、そう考えると、どう~も腑に落ちない所があるんです~」
黒子「だから、その腑に落ちない所というのは、何なんですの」
古畑「はい。部屋が……完全な密室だったことです」
黒子「はぁ?」
古畑「どうして、犯人は部屋を密室にしたのか。これが分からないんですよね~……」
黒子「どうして、と言われましても。部屋には佐天さん用のお布団がありましたから、
それを見て、誰かが外出していると思ったんでしょう。
そこで、邪魔が入らないように部屋に鍵をかけた。
――そんなところではありませんか?」
93:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 23:11:03.75 ID:nTLW7SIA0
古畑「ええ、おそらくそうでしょう――玄関の鍵に関しては」
黒子「玄関の……?」
古畑「私が分からないのはですね、どうして犯人は『窓に』鍵をかけたままにしておいたのか、ということなんです」
古畑「少し考えれば分かります。
完全な密室から犯人が消えたのなら、真っ先に疑われるのはテレポート能力者です」
古畑「逆に、もし、窓に鍵がかかっていなければ、光学系能力者が犯人であるという可能性もありました。
犯人は、自分の姿を見えなくして、隣のベランダに移動したんじゃないか、と
そんな風に考えることもできた!」
古畑「つまり、窓の鍵をかけたままにしておくということは、
『自分はテレポート使いだ』、と
犯人が自ら告白しているようなものなんです。
これが、どうも引っかかるですよね~……」
黒子「……」
94:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 23:13:31.20 ID:nTLW7SIA0
黒子「犯人の知恵が、そこまで及ばなかったのではないですか?」
古畑「30分……」
黒子「え?」
古畑「初春さんが気絶してから、アンチスキルが部屋に入るまでおよそ30分あるんですよ~……。
切迫した状況であれば、ベランダの方を見逃すこともあるでしょう」
古畑「しかし、犯人には証拠を隠蔽する充分な時間と余裕がありました。
事実、現場からは犯人に繋がる証拠品は、まるで見つかっていません!」
古畑「……そんな犯人がですよ? こんな致命的なミスを犯すでしょうか……!」
黒子「……」
95:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 23:15:54.74 ID:nTLW7SIA0
古畑「いかがですか、白井さん」
黒子「面白いご推察ですわね」
古畑「ありがとうございます」
黒子「しかし、わたくし、ご期待に添えそうもありませんわ。
『犯人はうっかり屋だった』
それくらいしか思いつきませんもの」
古畑「そうです、か……」
黒子「それでは、今度こそ、ごきげんよう」
古畑「……はい」
黒子「……あ、そうそう、古畑さん」
古畑「……なんでしょうか」
黒子「わたくしをお疑いになるのも結構ですけれど。
……わたくしが初春を殺そうとするなんてありえませんわ」
96:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 23:17:56.84 ID:nTLW7SIA0
黒子「確かに、わたくしにはアリバイがありません。
しかし、同様に、動機もなければ証拠もない。違いますか?」
古畑「んぇ~……おっしゃるとおりです」
黒子「そうでしょうとも。……それに、初春はジャッジメントです。
逆恨みを買うようなこともありますわ」
古畑「しかし~……聞いたところによると、ジャッジメントと言っても、基本的に重要な任務にはつかないのが常だとか」
黒子「わたくしと初春は例外ですわ」
古畑「え~……例外と言いますと?」
黒子「わたくしは戦闘で治安を維持しています。そして、初春は、学園都市が誇る超一流のハッカーです。
初春が通称『守護神(ゴールキーパー)』と呼ばれる、伝説のハッカーだと知られたら、
初春を狙う輩が出てきても不思議ではありませんわね」
黒子「まぁ、古畑さん、もし、また何か発見なさいましたら、常盤台まで是非いらして下さいまし。
微力ながらお力添えさせていただきますわ」
古畑「……はい」
古畑「……」ペシッ
98:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 23:20:09.30 ID:nTLW7SIA0
―同日4時18分 佐天涙子 マンション自室―
佐天「もう、事件のことはアンチスキルに全部話したんですけど」
古畑「え~、すみませんが……もう一度だけ~……、お聞かせいただけないでしょうか」
佐天「……仕方ないですね……。どこから話せばいいんですか、刑事さん」
古畑「そうですね~、事件当日のことをなるべく詳しくお願いします」
佐天「なるべく詳しくと言われても……」
古畑「思い出せる限りで構いません」
佐天「……んむ~、そうですね……。
あの日は、前から初春の家に泊まる約束をしていたんです。
週末だから、色々遊ぼうって」
佐天「それで、御坂さん、白井さんと一緒に映画を観に行ったり、セブンスミストで洋服を見たり、
ゲームセンターのUFOキャッチャーでゲコ太を必死に取ろうとする御坂さんを手伝ったり……」
今泉「いたって……ふつうの週末ですね!」
佐天「まぁ、みんなで遊ぶときは、いっつもそんな感じで」
古畑「それから?」
99:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/13(水) 23:22:20.78 ID:nTLW7SIA0
佐天「それから……夕方過ぎに白井さん、御坂さんと別れました」
古畑「その時間は」
佐天「う~ん……6時半くらい、だったかな? それから、私たちも初春の家に」
古畑「その日、何か……白井さんと御坂さんに、変わった様子はありませんでしたか?
んぅ~、『あ、これ、いつもとちがうぞ?』と感じた部分とか」
佐天「う~む……。……あ」
佐天「そう言われてみると……」
古畑「何ですか?」
佐天「御坂さんの様子がちょっと変でした」
古畑「というと?」
佐天「あれは確か……1時間近くねばってゲコ太人形をゲットした後くらい、だったかな。
御坂さんのケータイにメールが来たんです。
そのメールを見てから御坂さん、急に様子がおかしくなって」
古畑「どうおかしかったんですか?」
佐天「なんだか、ソワソワしてるというか、浮き足立っているというか……。
とにかく、いつもの落ち着いた御坂さん……あ、御坂さんはいっつもどっしり構えてるって感じなんですけど、
あのときは地に足がついてませんでした」
142:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 00:40:04.76 ID:MgIckzx/0
佐天「あ、思い出してきた。
……そういえば、御坂さん、あの日は、そのときから、何だかいつもと違う感じがしてました!」
古畑「メールの内容は分からない」
佐天「はい。ケータイをむりやり覗こうとした白井さんが、電撃で返り討ちにあってました」
佐天「あ、でも……内容は分からなくても、差出人は分かる気がします」
古畑「ほ~、それはまたなぜ」
佐天「初春から聞いたんですけど、御坂さん、どうも『上条当麻』っていうレベル0にぞっこんらしいんですよっ!
多分、差出人はそいつじゃないかと私はニラんでいます」
古畑「その人は、御坂さんの恋人で?」
佐天「本人の口が固いんで、よく分からないんですけど。つきあったり、とかはしてないみたいです。
っていうか、私は信じてないんですけどね。
『あの』御坂さんが恋だなんて。
万が一そんなことがあったとしても、相手はレベル0。アウト・オブ・ガンチューですよ」
古畑「フフフ……分からないものですよ……。特に男女の仲、というのは、ンフフ」
佐天「うぅ~ん、さすが古畑さん、大っ人ですね」
145:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 00:47:02.37 ID:MgIckzx/0
古畑「え~……他には、何か?」
佐天「そうですねぇ……。後は……特にいつもと変わった所はなかったような……」
古畑「分かりました。それでは、話を戻しましょう。
あなたは6時半頃、初春さんの家に行ったんですね?」
佐天「はい。初春の家では、ゲームしたり、花札したり、おしゃべりしたりしてて……。
でも、今思い返すと、そのときから、初春、ちょっと調子が悪かったみたいで」
古畑「調子が?」
佐天「一緒にお風呂に入った後、初春が『ちょっと具合が悪い』って言ったので、すぐ休むことにしました」
古畑「それは何時頃ですか?」
佐天「そうですね……よく覚えてないんですけど、多分、11時くらいじゃなかったかな。
私としては、もうちょっと色々しゃべってたかったんですけどね。せっかくのお泊まりでしたし。
でも、仕方ないなって」
149:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 00:52:16.84 ID:MgIckzx/0
佐天「で、私は寝つきがいいので、すぐに寝ちゃったんですけど、それから初春に起こされたんです。
『すごく気持ち悪い』って言うから、とりあえず電気を点けて、おでこを触ったらすごく熱くて。
風邪薬を飲ませてあげようと思ったんですけど、救急箱を見たら薬がきれていました」
古畑「それで、ドラッグストアに」
佐天「はい。とりあえず冷凍庫にあった保冷剤をタオルでくるんで額にあてて、薬を買いに」
古畑「それが11時45分頃」
佐天「たまたま時計が目に入ったので、時間は正確だと思います」
古畑「薬を買いに行く途中……、不審な人物を見かけませんでしたか?」
佐天「いいえ。というか、人をみかけませんでしたね、そもそも。深夜でしたし」
古畑「帰りも?」
佐天「人っ子ひとり」
古畑「そして、いざ薬を買って帰ってきたら、鍵がかかっていた、と」
佐天「はい」
152:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 00:57:47.68 ID:MgIckzx/0
佐天「驚きました。あんな状態で動けるわけないのに、どうして鍵がかかってるのって。
チャイムを鳴らしてもドアを叩いても反応がなくって、すごく嫌な予感がしたのを覚えてます」
古畑「それは不安だったでしょう。……お察しします」
佐天「ドアをガンガン叩いてたら、隣の人が出てきたので、管理人さんを呼んでもらいました。
管理人さんはすぐ来てくれて、カードキーで鍵を開けてくれたんですけど……」
古畑「今度はチェーンがかかっていた……」
佐天「そのとき確信したんです。絶対、初春の身に何かあったんだって。
……あの子、チェーンロックなんてかける習慣なかったんです。
それに、元々何かとトラブルに巻きこまれやすいし……私、どうにかしなきゃって……」
古畑「そこでアンチスキルを呼んだのは良い判断でしたね~」
佐天「幸い、マンションにもすぐ来てくれて。
すぐにチェーンロックを切ってもらって中に入ったんです。
そしたら……ベッドで初春が……頭から血を流して……倒れてました」
佐天「アンチスキルの人に、部屋の中に犯人がいるかもしれないから、初春の側から離れるなって言われて……。
私、初春をずっと抱いてました。
それから、他のアンチスキルの人たちが来て、またちょっとしたら救急車も来たので、
一緒に病院に連れて行ってもらったんです」
157:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 01:03:08.39 ID:MgIckzx/0
古畑「いや~、中学一年生とは思えない対処ですね。この男、今泉って言うんですがね。
こいつよりよほど頼りになりますよ」
今泉「ふ、古畑さんっ!」
佐天「自分で言うのもなんですけど、けっこー修羅場、経験してますから、はは」
古畑「……佐天さん、ひとつ確認したいことが」
佐天「なんでもどうぞ」
古畑「チェーンロックがかかっていたときのことです。最初、チェーンロックが
かかっているのを知ったとき、確かに部屋の灯りは点いていましたか?」
佐天「はい」
古畑「どんな小さなことでも構いません。そのとき、他に何か……気づいたことは」
佐天「これは、これからお話しするつもりだったんですけど」
古畑「はい」
佐天「部屋の中は直接見えなかったんですけど、何かゴソゴソ音が鳴っていました」
古畑「ゴソゴソ……?」
160:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 01:09:03.85 ID:MgIckzx/0
佐天「犯人が、部屋を荒らす音だったんだと思います。
初春の部屋に入ったとき、大分荒らされてましたから」
古畑「部屋の灯りですが、アンチスキルは、チェーンロックを解錠する直前に消えた、と言っています」
佐天「はい。そのとおりです」
古畑「間違いありませんか?」
佐天「間違いありません」
古畑「……んぅ~……」
今泉「あ、あの、佐天……涙子さん?」
佐天「はい?」
今泉「け、警察とか興味ある?」
佐天「はぁ?」
今泉「ボクと古畑さん、学園都市の外で刑事してるんだ」
佐天「さっき聞きましたけど」
今泉「コ、コレ、警察手帳」キリッ
佐天「はぁ」ポカーン
162:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 01:16:08.26 ID:MgIckzx/0
佐天「古畑さん」
今泉「ちょっ、佐天さん、コレね……」
古畑「はい?」
佐天「単刀直入にうかがいます」
古畑「……はい」
佐天「もしかして……白井さんのこと、疑ってますか?」
佐天「アンチスキルから聞きました。
犯人は、初春の知り合いで、テレポートを使える能力者である可能性が高いって」
佐天「レベル0――何の能力も持たない私でも知ってます。
『空間移動(テレポート)』は特殊なを計算をするから、能力者の数は多くない。
私が知る限り……初春と知り合いのテレポート使いは……」
古畑「……んぅ~……正直、今のところ何とも言えない、といったところです」
佐天「私は、白井さんと初春がすごく強い絆で結ばれてるって知ってます。
だから、白井さんが犯人じゃないって思ってます。でも……」
古畑「……」
佐天「私この前……見ちゃったんです……。
その……白井さんと初春が、凄い剣幕でケンカしてるのを……」
169:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 01:22:47.27 ID:MgIckzx/0
古畑「……ケンカ、といいますと?」
佐天「何であんなに怒鳴りあってたのか……内容まではよく聞き取れませんでした。
でも、二人とも、すごく本気だったと……思います……」
佐天「古畑さん……私、不安なんです……何を信じたらいいのか……。
もし、白井さんが本当に犯人だったらって……」
古畑「……え~……佐天涙子さん」
佐天「……はい」
古畑「『もしかしたら、信じても裏切られるかもしれない』。
その気持ち、とてもよく分かります」
古畑「しかし……たとえ、裏切られるかもしれないとしても……もし、そうだとしてもですよ?
最後まで相手を信じて抜いてあげるのが、本当の友人だと私は思います。
あなたが白井さんの友人でありたいと思うなら……彼女を、最後まで信じてあげて下さい」
佐天「古畑……さん……」
古畑「……」ニコッ
171:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 01:28:49.57 ID:MgIckzx/0
ピピピピピピピ
古畑「あ、これ私だ。え~っと」ゴソゴソ……ピッ
??『古畑さん、ですよね』
古畑「もしもし、はい、古畑です」
??『あの……御坂です……』
古畑「どうしました?」
美琴『実は……少し……折り入ってお話ししたいことが……』
古畑「……分かりました」
美琴『常盤台中学の……私の寮室まで、来てもらえますか……? できれば、なるべく早く……』
古畑「分かりました、ではすぐに参ります。それでは」ピッ
今泉「さ、佐天さんは、かか、彼氏とかいるの?」
佐天「あ、あの、ちょ、ちょっと……!」
ペシィッ!
今泉「痛ぁッ!」
古畑「何やってんだよ。すぐ常盤台中学に行くから。大至急」
175:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 01:34:20.41 ID:MgIckzx/0
―同日 午後5時02分 常盤台中学校 校舎前―
今泉「まさか、常盤台中学に入れるとはなぁ~」
古畑「……」
今泉「興奮してきませんか? 古畑さん! フヒヒッ!」
寮監「ちょっと、あなたたち!」
今泉「へ?」
寮監「何ですか、あなたたちは」
今泉「あ、ボク実は……この学校の生徒と」ゴキィッ!……ドサッ
寮監「……まったく、ここ最近、変質者が増えたな……」
今泉「」ピクッピクッ
176:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 01:40:01.81 ID:MgIckzx/0
古畑「え~、この学校の方でいらっしゃいますか?」
寮監「ええ、女子寮の寮監をしております。それで、あなたは?」
古畑「刑事の古畑と申します」
寮監「刑事……?」
古畑「アンチスキルから権限をもらって、今、ある事件の捜査を。これがIDと、権限委譲の証明書です」
寮監「……我が校の生徒が、この事件に関わっている、と?」
古畑「いいえ。あくまで参考までにお話しをうかがいたいだけです。
話が終われば、すぐに退散します~……フフ。
少しだけ、中に入らせていただいても構いませんでしょうか」
寮監「……アンチスキルから権限が委譲されているとなれば、仕方がありません。
しかし、くれぐれも妙な行動は起こさないようにして下さい。ここは女子寮です」
古畑「はい。しっかり心に留めておきます……フフ」
寮監「ご帰宅されるときは、そこの警備に一言声をかけて下さい。それでは」
古畑「あ、ちょっと」
寮監「はい、なんでしょう」
古畑「御坂美琴さんの部屋まで案内して下さると、大変助かるのですが……」
179:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 01:45:47.62 ID:MgIckzx/0
―同日同刻 常盤台中学校学生寮 廊下―
古畑「いや~、やっぱり有名校ともなると違うものですね~。
どこもかしこも気品に満ちあふれている……フフ」
寮監「古畑さん」
古畑「はい」
寮監「あまり騒ぎ立てないで下さい」
古畑「あ、これは失礼」
??「あ、ちょっとそこの殿方」
古畑「ん~、あれ? 私? 私ですか?」
??「あ、あの……御名前は、何とおっしゃいますの?」
古畑「……え~、古畑と申します」
??「古畑様とおっしゃいまして……。どうしてこんな場所にいらしたのですか……?」
古畑「ん~……フフ……ちょっとした、ヤボ用です」
182:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 01:50:58.65 ID:MgIckzx/0
寮監「婚后、なぜ貴様がここにいる」
婚后「わたくしも、『ちょっとした、ヤボ用』というやつですわ。それよりも古畑様、
不躾で申し訳ありませんが、是非ご連絡先を教えていただけないでしょうか……?」
古畑「……」ポリポリ
寮監「婚后」
婚后「わたくし、貴方のような素敵な殿方と出会うのを待ち望んでおりました……!」
ガシッ
寮監「古畑さん、御坂と白井の部屋は突き当たりです。それでは私たちはここで」
婚后「ちょっ! な、何をするんですか! わたくしを婚后光子と知っての狼藉ですの!?」
寮監「知ってるに決まってるだろ、馬鹿者」ズルズル
婚后「ふ、古畑様、古畑様ぁ~!」ズルズル
古畑「……」
185:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 01:56:52.20 ID:MgIckzx/0
―同日同刻 常盤台中学校学生寮 美琴と黒子の部屋―
ガチャッ
美琴「あ、古畑さん」
古畑「どうも」
美琴「聞こえてきましたよ、婚后さんの声」
古畑「フフフ……今のお嬢さんは積極的ですね~」
美琴「悪い人じゃないんですけど、ちょっとクセのある人なんですよ」
古畑「ん~フッフッフ……世の中、色んなタイプの人がいるものです」
美琴「あ、すみません、立たせてしまって……。そこのベッドに腰かけてもらってもいいですか?」
古畑「いいんですか? ……それでは、失礼して」
美琴「寮なもので、接客用の椅子がなくって。ごめんなさい」
古畑「いえいえ、お構いなく」
美琴「……」
古畑「……」
186:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 02:02:04.19 ID:MgIckzx/0
美琴「古畑さん……」
古畑「……はい」
美琴「古畑さんは……今回の事件、どうお考えですか……?」
古畑「どう、と言いますと?」
美琴「犯人は初春の知人で、女の人。そして、テレポート能力を持っている。
そう、考えてるんですよね」
古畑「んぅ~……確かに、状況証拠は、すべてその人物を示唆しています」
美琴「黒子以外、その条件が当てはまる能力者、いましたか?」
古畑「……いいえ」
美琴「……古畑さん、私は、黒子は事件に無関係だと思っています」
古畑「……」
美琴「黒子は、私の大切な友だちです。
確かに、人がシャワーを浴びているところにテレポートしてきたり、媚薬を飲ませようとしてきたり、
人の下着を盗んだり、盗撮した写真をアルバムにして持っていたり、
他にも数え切れないくらいの変態行為を、私にしでかしていますけど」
189:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 02:07:43.64 ID:MgIckzx/0
美琴「――でも、私たち、いくつも、一緒に事件を解決してきました。
だから、黒子は犯人なんかじゃない。
黒子に罪を着せようとしている人間が別にいるんです」
古畑「……」
美琴「そして、あなたなら、必ずその真犯人を見つけ出してくれる」
古畑「……」
美琴「だから、私、本当のことを話そうと思いました。
少しでも、事件の手がかりになるかもしれないから」
古畑「本当のこと、ですか……?」
美琴「実は……事件が起きたあの時間……私、この部屋にいなかったんです」
古畑「……詳しく、お聞かせ願えますか、御坂さん」
美琴「はい。私……ある人にメールで呼び出されて、ここから歩いて15分くらいの河原にいたんです」
190:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 02:13:34.24 ID:MgIckzx/0
―回想:事件当夜 午後11時45分 学園都市某所―
美琴(約束の時間まであと15分……なんだか早く来すぎちゃったかな)
美琴(アイツ、いったいこんな時間に呼び出して、何のつもりなんだろ)
美琴(ついに、完全に決着をつける気になった、とか……)
美琴(アイツの性格から考えて、そんなわけないか……)
美琴(くそっ! なんでこんなことで胸が苦しくなるのよ!)
美琴(とりあえず、飲み物でも飲んで落ち着け、私!
……久しぶりに四ッ矢サイダーでも飲んで、気分を爽やかに)カチャリカチャリカチャリ
美琴(そういえば、アイツに缶ジュース2000円分おごってやったことあったっけ……)ガコンッ
美琴「ハァ……」プシッ! ……ゴクゴクゴク
192:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 02:18:59.80 ID:MgIckzx/0
―回想:事件当夜 午前0時15分 学園都市某所―
美琴(……)イライライライラ
美琴(……)シュッ ピッピッピッピッピッシャ
美琴(……)イライライライラ
美琴(……)シュッ ピッピッピッピッピッピピシャッ
美琴(……)イライライライラ
美琴(……)シュッ ピッピッピッピッシャッ
美琴「だぁぁぁああああああああああああッッ!!
いつまで待たせる気だあのボケナスーッ!
何が悲しくて深夜にひとり川で水切りしてなきゃいけないのよ私はッ!!」
美琴(……)
美琴(……これってやっぱり)
美琴(……フラれたってことなのかな……)
美琴(……アイツにとって、あたしなんて、どうでもいいのかな……)ゴクゴク
美琴「もう、帰ろう……」コトン
193:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 02:24:17.40 ID:MgIckzx/0
―回想終了―
美琴「――という感じで、ずっと、私、河原にいました」
美琴「だから、事件が起きた11時50分から0時15分頃まで、私、黒子のことを見てないんです」
古畑「なるほど……そうです、か……」
美琴「何の参考にもならないですよね……」
古畑「いいえ」
美琴「え……?」
古畑「確かに、『今は』、まだこのお話にどういった意味があるのかは分かりません。
しかし、正しい情報は、必ず捜査を正しい道へ導いてくれます。
御坂さん、あなたが告白してくれたことは、決して無駄にはなりません」
美琴「古畑さん……」
古畑「真実とは、そういうものです」ニコッ
199:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 02:29:29.55 ID:MgIckzx/0
バンッ
今泉「古畑さんッ! ひどいじゃないですか! なんでいつもボクばっかりのけ者にするんですかっ!」
美琴「い、今泉さん、どうしてここに!?」
古畑「……騒ぐと、また寮監さんにやられるよ」
今泉「くっ……」
バンッ
婚后「古畑様ッ!」
美琴「こ、婚后さんまで……」
婚后「御坂さん、この私を差しおいて、古畑様と二人きりで一体何をしていらしたのかしら!?」
今泉「うわっ、ここが女子寮……! この部屋で、白井さんと二人で住んでるんですねっ!」
美琴「い、今泉さん、勝手に色々触られちゃ困ります!」
婚后「事と次第によっては貴女と一戦交えることも辞さなくてよ!」バッ!
美琴「ちょ、ふ、古畑さん、何とかして下さい!」
今泉「ふおぉっ! これはっ!」ガチャッ
200:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 02:34:46.58 ID:MgIckzx/0
寮監「――それには及ばん」バゴキィッ!
今泉「ゲフッ!」
婚后「ゴフッ!」
寮監「さて、古畑さん。そろそろお引き取り願いましょうか」
古畑「え~……、また、うちのバカがご迷惑をおかけしてすみませんでした」
寮監「まったく……『外』の刑事さんの品格を疑いますよ」
古畑「こいつは例外中の例外だと思って下さい」
寮監「ともかく、もうお時間です。これ以上の長居は許されません」
古畑「承知しました。すぐ退散します」
寮監「それでは」ズルズル
婚后「」ズルズル
美琴「古畑さん……」
古畑「いや~、すみません、お恥ずかしいところをお見せしてしまって」
201:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 02:39:59.68 ID:MgIckzx/0
美琴「……」
古畑「御坂さん」
美琴「……何ですか?」
古畑「佐天さんが言ってました。
御坂さんはいつも落ち着いていて、どっしり構えてる人だ、と」
美琴「佐天さんが……?」
古畑「そんな弱気な姿は、あなたには似合いません」
美琴「古畑さん……」
古畑「この事件は、必ず私が解決します。
ですから、心配なんかしないで、あなたは、あなたらしくあって下さい」
美琴「……はいッ!」
美琴「何だか、ちょっと心が楽になった気がします……。
私がしっかりしなくちゃ、ですよねぇ!」
美琴「……ありがとう、古畑さん」
古畑「……」ニッ
204:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 02:45:59.03 ID:MgIckzx/0
―同日 午後6時18分 学園都市某所―
古畑「……ふぅ~……」
今泉「いつまで考えこんでるんですか」
古畑「……んん~~……」
今泉「ハナっから、こんな超能力を使った犯罪なんて、解決はムリだったんですよっ!」
古畑「……」
古畑「……今泉君さぁ……」
今泉「はい?」
古畑「何か飲み物ない? ずっと動きっぱなしだったから喉かわいちゃったんだよ~」
今泉「は、はい、買ってきます!」
古畑「……」
206:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 02:51:36.80 ID:MgIckzx/0
~5分後~
今泉「はいっ! 買ってきました!」
古畑「何これ」
今泉「ホットの、スープカレーの缶ジュースです。学園都市にしか売ってないやつ!」
古畑「こんなに暑いのに、こんな温かいもの誰が飲むんだよ」
今泉「発汗作用が、逆に身体を冷やすんですよっ!」
古畑「いらないよ。何か別の物。……あれ、君、何持ってるの?」
今泉「!?」
古畑「そっち冷たいじゃない。そっちちょうだいよ」
今泉「こ、これはだめですっ!」
古畑「つべこべ言わない」ペチッ
今泉「あ痛ッ!」
古畑「……ん~? 何だぁ、これ?」
211:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 02:57:26.41 ID:MgIckzx/0
古畑「ほとんど中身入ってないじゃないか。
しかも、飲み口のところがシールで止めて……」
古畑「……今泉君」
古畑「これ、この缶ジュース、どこで手に入れた?」
今泉「……」
古畑「……」
今泉「さ、さっきの、御坂さんの部屋の……冷蔵庫から……」
古畑「……ッ!」
今泉「ど、どうしたんですか古畑さん、急に携帯なんか取り出して!」
古畑「……」ピポパポピピピ
プルルルルル……
古畑「……あ、どうも、古畑です。先ほどはどうも。
実はですね、ちょっと至急お聞きしたいことが出てきまして。
はい。実は――」
213:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 03:01:25.69 ID:MgIckzx/0
――画面暗転 通話を終えた古畑にスポットライト――
チャラッ♪ チャ~♪ チャ~♪ チャ~♪ チャ~♪ チャラッ!♪
古畑「え~……非常~に変わった事件でした。過去、エセ超能力者が犯人だったことはありますが、
本物の超能力者が関わった事件は、さすがに今回が初めてです。
そして、おそらくこれからもないでしょう。
チャラッ♪ チャ~♪ チャ~♪ チャ~♪ チャ~♪ チャラッ!♪
この事件では、すべての状況証拠がある人物を指しています。
しかしぃ? 物的証拠は何もありません。果たしてその人物は、本当に犯人なのか。
もしそうでないとしたら、別に真犯人がいるのか……?
チャラッ♪ ダダッ チャ~♪ ダダッ チャ~♪ ダダッ チャ~♪ ダダッ チャ~♪ ダダッ チャラッ!♪
ヒントになったのは、コレ。
御坂さんの部屋の冷蔵庫で見つけた、『ほとんど中身の入っていない缶ジュース』。
それから、もうひとつ、『初春さんの部屋の状態』。ンフフフフ……。
このスレを読んでいるみなさんも、ちょっと考えてみてください。
ちなみに、『とある科学の超電磁砲』を知っていても知らなくても、
ちゃんと真相の近くまで、たどりつくことができるように書かれてあると思います、多分。
――古畑任三郎でした。
チャララ チャチャチャチャ~!!♪
217:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2011/07/14(木) 03:11:07.02 ID:MgIckzx/0
と、いうところで問題編は終了になります。
おそらくみなさん、真相にたどりつくことは簡単だと思います。
ただ、解答編も飽きがなく読めるように作ってあるつもりですので、今日、この物語が楽しめた方は
同じように楽しめるのではないかと思います。
ここまでお読みいただきまして、誠にありがとうございました。
また数時間後、お会いしましょう。
それでは、失礼します。
【 関 連 記 事 】