6:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/13(月) 23:42:21.18 ID:OaA3C6xa0
妹「そ、そうかな」
兄「そうだよ」
妹「どれくらい弾いてる?」
兄「毎日」
妹「そっ、そんなにしょっちゅう弾いてないよ!」
兄「いんや弾いてるね」
妹「弾いてないっ」
7:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/13(月) 23:48:09.57 ID:OaA3C6xa0
兄「おいおい、昨日弾いてたこと忘れたのかよ」
妹「忘れたっていうか、そもそも弾いてないもん」
兄「弾いてたんです。昨日だけに限らないんです」
妹「そんなことないよ。弾いてないよっ」
兄「そんなことあんの。ちょっと思い出してみろって」
8:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/13(月) 23:54:07.94 ID:OaA3C6xa0
妹「うーん…昨日、かぁ…」
兄「…」
妹「ぬぬ……」
兄「どうだ?思い出したか?」
妹「……全然」
9:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 00:00:00.91 ID:v/zjkEod0
兄「いいか妹。お前は昨日もこの極を弾いてたの」
妹「えー、そうかなぁ」
兄「そうなの。そんで俺がこの曲何って聞いたら『主よ、人の望みの喜びよ』だよって言ったの」
妹「ええ?私そんな記憶全然ないよ?」
兄「無いだけ。実際はそういうやりとりがあったの」
妹「…」
12:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 00:06:45.99 ID:v/zjkEod0
妹「お兄ちゃん、ひょっとしてあたしのことからかってる?」
兄「お前のことなんざからかってどーすんだよ」
妹「いや、あたかも事実の如く振舞ってあたしのことをマインドコントロールしようとしてるのかと…」
兄「おばか。そんなことするか」
妹「えぇ~ほんとかな~。どうかなぁ~?」ニヤニヤ
兄「言っとくけど俺はお前のことただの芋としか思ってないから」
妹「いもっ…!?」
13:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 00:07:46.82 ID:MoITNm8F0
芋ワロwwwwww
15:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 00:12:25.31 ID:v/zjkEod0
兄「ところで、妹はなんでその曲がそんなに好きなんだ?」
妹「好きっていうか…なんだろ。これ弾いてるとなんだかぼーっとするの」
兄「ぼーっとする?」
妹「うん」
兄「なにそれ。どういうことさ」
17:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 00:16:59.01 ID:v/zjkEod0
妹「これってね、人間がすること全てを描いてるような気がするの」
兄「人間がすること全て?」
妹「うん」
兄「たとえばどういうの」
妹「うーん…」
18:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 00:21:24.40 ID:v/zjkEod0
妹「喧嘩だったり、恋愛だったり…」
妹「戦争だったり、人間関係とか、生きたいって気持ちや無への願望だったり…」
兄「…」
妹「差別、救いの気持ち。毛嫌い、誰かを好きになる心」
妹「そういう人間がすること、持ってるもの全てを表してる気がする」
兄「…」
妹「もしかして、表してるのは人間そのものなのかもね」
20:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 00:27:04.01 ID:v/zjkEod0
兄「ふーん」
妹「……いま、そんなことどうでもいいって思ったでしょ」
兄「いや、訳わからんとおもった。おわり」
妹「んもうっ、言わせておいて何よそれ!」ポカ
兄「いだっ」
21:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 00:31:35.11 ID:v/zjkEod0
妹「ああっ、お兄ちゃんなんかに真面目に答えてる自分が恥ずかしくなってきた」
兄「随分な言われようですな、俺」
妹「お兄ちゃんて昔からそう。あたしにからかい半分で接してきてる気がするー!」
兄「そんなことないよ。普通に接してるよ」
妹「…ほんとに?」
兄「………からかうのは面白いと思うが」
妹「うがー!」
23:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 00:37:10.77 ID:v/zjkEod0
兄「まぁでも、俺のこととその曲だけは忘れないでいてくれるんだなぁってのは分かった」
妹「何言ってるの。お兄ちゃんのこと忘れるわけないじゃない」
兄「あはは。本当にそうだといいけどなぁ」
妹「ていうか、あたしは普段から物忘れをするタイプじゃありませんっ」
兄「そうだなー」
56:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 02:43:36.93 ID:JXaitD0l0
誰か曲のリンク貼ってくれ
62:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:02:27.71 ID:v/zjkEod0
>>56
24:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 00:42:14.48 ID:v/zjkEod0
○月☓日
今日は久しぶりにピアノを弾いてみた
あの曲を弾くと、たくさんのことから開放されて、とても心地が良い
自分がどこまでも広がっていく気がする
26:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 00:46:39.57 ID:v/zjkEod0
しばらくしたらお兄ちゃんがやってきて、妹って毎日その曲弾いてるよなーって言ってきた
毎日って、ピアノを弾いたのは久しぶりのことだよー!
そんなことないって言ってみたら、そんなことないっていわれた
あたしがおかしいのかな?
29:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 00:52:32.87 ID:v/zjkEod0
そういえば最近、つじつまが合わないというか、しっくりこないときがある
なんだろ。毎日どこか行ってたような気がするとか、誰かが一緒にいた気がするとか、
そんなふうな感じでふと思い立つことがあるの
よくわかんないなー
30:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 00:57:19.55 ID:v/zjkEod0
でも、今までお兄ちゃんがずっと隣にいたっていうのは確かなこと
やっぱりお兄ちゃんは特別
好き
兄妹でそんなのっておかしいかな?
でも、好き
32:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 01:02:43.09 ID:v/zjkEod0
妹「やっほーお兄ちゃんっ」ドスッ
兄「ぐはっ!?」
妹「ねぇねぇお兄ちゃん聞いて、今日はあたしがケーキを焼いてあげるよ!」
兄「」
妹「あれ?お兄ちゃーん?」
33:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 01:03:14.95 ID:MoITNm8F0
死んだだと……!?
34:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 01:08:09.01 ID:v/zjkEod0
兄「で、今日はなんだって?」
妹「今日はお兄ちゃんにケーキを焼いてあげようとおもって」
兄「ケーキ?俺の誕生日は8月だけど」
妹「いいのいいの!今日はお兄ちゃんにケーキを焼いてあげるの!」
兄「んー。よくわかんないけど、ありがとう」
妹「えへへ、もっとわたしを誉めよ」
兄「うっはぁまじでほんとにすっげえありがとう妹大好き万歳!!」
妹「うんうん。苦しゅうない、苦しゅうないぞ~♪」
36:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 01:13:08.52 ID:v/zjkEod0
妹「じゃあ、早速作るとしますか」ムンズ
兄「…途中でつまずいたら、無理しなくていいからな」
妹「何行ってんの。ケーキはお菓子の中でも一番自信があるんだよ?」
兄「そうなのか」
妹「そうだよ。中学生のころよく作ってあげたじゃない」
兄「そういえばそうだったっけな」
妹「毎回同じやつ作ってあげたでしょ?お兄ちゃんのせいで工程を全部覚えちゃったんだから」
兄「あはは。そうか」
37:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 01:18:32.67 ID:v/zjkEod0
兄「まああれだ。とにかく頑張れ」
妹「うんっ。あたし頑張る」
兄「んじゃあ、俺は横でお前のこと見てるとするかな」
妹「えぇぇ…いいよ、恥ずかしいよぉ…」
兄「なんで見られるのが恥ずかしいんだよw」
妹「だってー…なんか…ねぇ」
38:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 01:22:35.15 ID:v/zjkEod0
妹「まぁいいや。それじゃあ早速始めるね」
兄「うん」
妹「えっと…まずはクリームを作る作業から始めるから」
兄「おう。無理するなよ」
妹「何言ってんのー、無理も何も無いでしょ」カチャ
ぼやっ…
妹「…………?」
39:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 01:27:06.47 ID:v/zjkEod0
妹「あ…あれ…?」
兄「どうした、妹」
妹「え…あれ、クリームってどうやって作るんだっけ…?」
兄「…」
妹「お、おっかしいな…全部覚えてたはずの工程が、思い出せない」
兄「妹」
妹「えっと…確かクリームは…」
ぼやーん
妹「え…どうして?えっ……?」
40:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 01:31:08.01 ID:v/zjkEod0
兄「暫く作ってなかったからドわすれしたんじゃないか?」
妹「そ、そうなのかな」
兄「きっとそうだ。レシピを見ながらやればできるよ」
妹「う…うん、そうだね。レシピを見ればできるよね」
兄「ああ。できるよ」
妹「よし。…レシピを見よう」
42:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 01:35:25.42 ID:v/zjkEod0
しばらくして
妹「お兄ちゃん…ケーキ完成した」
兄「お?どうだ、うまくできたか?」
妹「…」
兄「おおー、これはまたうまそうなチョコレートケーキだなぁ」
兄「妹、早速だけど、これ食べていいか?」
妹「…うん」
43:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 01:41:10.20 ID:v/zjkEod0
兄「なんだよ。せっかくできたってのに嬉しくなさそうだな」
妹「そう…?」
兄「そうだよ。どした、なにかあったのか」
妹「……」
妹「えっとね、なんだか、前みたいにうまくいかないの…」
兄「はぁ?これのどこがうまくいってないわけよ」
妹「…なんだかよくわからないけど、だめ。だめなの」
44:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 01:45:18.93 ID:v/zjkEod0
妹「うまく言えないんだけど、わかってるのにできないというか…できないけど分かってると言うか」
妹「何か…まるで、生まれて初めて作ったみたいな感じだった」
兄「…」
妹「よく、わからないの。とにかく、良く分からないの…」
兄「そうか」
45:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 01:50:05.34 ID:v/zjkEod0
妹「お兄ちゃん。なんだろ。あたしってどこかおかしいのかな…」
兄「いや、ただ単に疲れてるだけだろ。別におかしな事じゃないさ」
妹「そうかな…」
兄「そうだよ」
妹「あたし、おかしくない…?」
兄「おかしくない。どこもおかしくなんてないよ」
47:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 01:57:43.07 ID:v/zjkEod0
兄「おい妹」
妹「ん?なあにお兄ちゃん」
兄「ちょっと買い物に付き合ってくれないかな」
妹「えーなんでよ。お兄ちゃん一人で行ってきてよ」
兄「まあまあ、そう言うなって。ちょっとだけだから」
妹「……お菓子、かってよね」
兄「はいはい」
48:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 02:04:12.44 ID:v/zjkEod0
近所のスーパー
妹「で、今日は何を買うの?」
兄「まだ決まってない」
妹「えぇ?決まってないのに買い物しに来たの?」
兄「いやー晩御飯は大体は決めてきたんだけど」
妹「へぇ。なあに?」
兄「えと…肉じゃが」
49:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 02:11:11.63 ID:v/zjkEod0
妹「肉じゃがなら、買うものは決まったようなものじゃない」
兄「そうか?」
妹「そうよ」
兄「そうなのか…」
妹「もー、しっかりしないとだめでしょお兄ちゃんっ」
兄「俺、料理任されるようになってから少ししか経ってないから…ごめん」
妹「はぁ…しょうがないなぁお兄ちゃんは。いいよ、わたしが品物選びするから」
兄「えっ?」
50:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 02:16:52.71 ID:v/zjkEod0
兄「品物選びってお前…肉じゃがの作り方覚えてるのか」
妹「何いってんの。覚えてないと食材買えないじゃん」
兄(肉じゃがのことはまだ覚えてる…?)
妹「よっし、それじゃあさっさと食材を買っちゃうよ」
兄「う、うん」
51:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 02:21:36.95 ID:v/zjkEod0
店員「お会計、2450円です。ありがとうございましたー」
兄「…」
妹「お兄ちゃん」
兄「ん、あ…なに?」
妹「きょうの晩ご飯はわたしが作ってあげる」
兄「え、いや、いいよ」
妹「いいのいいの。お兄ちゃんなんだか疲れてるっぽいし、わたしが作る」
兄「いや、だからいいってば」
妹「まーまーそう言わないで。私にまかせなさーい」
53:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 02:30:34.98 ID:v/zjkEod0
兄「そんな事言ったって、妹はいつも作るの失敗するじゃん」
妹「失敗?」
兄「うん」
妹「またまた~。わたしが料理で失敗なんてするはずないじゃん」
兄「いや…いつもわたしが作るっていって結局は」
妹「ないない、それはない」
54:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 02:39:01.63 ID:v/zjkEod0
妹「ほらお兄ちゃん、はやくおいもを洗って洗って」
兄「お…おう」
ザバザバ
妹「ふむ、その間にわたしはお湯を沸かしちゃおう。お兄ちゃんお鍋にお水入れて」
兄「ほいさ」
妹「ありがとー」
57:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 02:46:32.54 ID:v/zjkEod0
妹「よしよし、あとはお兄ちゃんのお芋洗いを待つだけね」
兄「お、おう」ザバザバ
妹「お兄ちゃんがんばれ~」ポカポカ
兄「あはは。妹、今日はいつになく順調だな」
妹「料理に順調も何もないよー。そうじゃないと毎回大変だよ?」
兄「いや、お前は毎回いつも大変だ」
妹「えぇ?そんなことないよー」
兄「そんなことあるの。全くお前は」
妹「えー?」
58:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 02:50:29.73 ID:v/zjkEod0
妹「あっ…お兄ちゃん、またまた私のことからかってるのね…」ぐぬぬ
兄「からかってないよ。第一お前のことなんざからかってどーすんだよ」
妹「いや、あたかも事実の如く振舞ってあたしのことをマインドコントロールしようとしてるのかと…」
兄「はぁ……ないない、それはないよ」
妹「えぇ~ほんとかな~。どうかなぁ~?」ニヤニヤ
59:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 02:55:03.70 ID:v/zjkEod0
兄「だから、俺はお前のことはこの芋のようにしかおもってないの」
妹「いもっ…!?」
兄「そうそう、いもいも」
妹「…お兄ちゃんのばか」
61:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 02:59:35.92 ID:v/zjkEod0
兄「それはいいから。ほら、鍋のお湯が沸いたぞ」
妹「えっ?」
兄「芋は俺が切っておいたから。後の作業は妹に任せるよ」
妹「え…?えっ…?」
兄「いやぁ今日は助かった。まだ慣れない料理を妹が作ってくれるからさ」
妹「…え?」
兄「ありがとうな。妹」
妹「……………」
63:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:06:39.39 ID:v/zjkEod0
妹「お…お兄ちゃん、なにいってるの…?」
兄「え?」
妹「わ…わたし、お兄ちゃんが何言ってるのかわからない」
兄「…」
妹「二人で話してる途中で、急にお湯が沸いたとか言ってわたしにふったり、芋を切っておいたとか言ったり…」
兄「…」
妹「お兄ちゃん、どうしたの?」
兄「…い、いや。………なんでもないよ」
64:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:10:44.35 ID:v/zjkEod0
妹「あっ、ひょっとしてお兄ちゃん、疲れてる?」
兄「…いや、大丈夫。平気だよ」
妹「大丈夫って…そんなことないよ。お兄ちゃん絶対に疲れてるよ」
兄「大丈夫だって」
妹「だめ。絶対に疲れてる。だからお兄ちゃんはお部屋に戻って横になったほうがいいよ」
兄「横になるって…そんなことしたって晩御飯が」
妹「? 晩御飯?」
65:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:14:35.98 ID:v/zjkEod0
妹「晩御飯が、どうかしたの?」
兄「いや…その、覚えてないのか?先刻までのこと」
妹「さっきまでのこと?」
兄「そうそう。一緒に買物に行って、今日はわたしが肉じゃがを俺の代わりに作るって…」
妹「は?わたし、そんな事言った?」
兄「あ…いや、その」
66:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:18:15.35 ID:v/zjkEod0
妹「わたし、今日はどこにも行ってないよ。ずっとこの場所にいた」
兄「…台所にか?」
妹「台所……かどうかは覚えてないけど、とにかく今日はどこにも行ってない」
兄「そうか」
妹「うん」
67:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:22:46.49 ID:v/zjkEod0
兄「まぁ、いいや」
妹「ん?」
兄「妹は相変わらず天然さんみたいだし、今日は俺がご飯を作るわ~」
妹「なっ…わたし天然さんじゃないよっ」
兄「どこが。思いっきり天然さんだろお前。天性のな」
妹「そんなことないもん、わたしはお兄ちゃんのことをしっかりサポートする出来る妹だもんっ!」
兄「そーかそーかそーですか~」
68:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:25:35.95 ID:v/zjkEod0
兄「とにかく妹、お前は部屋に戻れ」
妹「部屋に?」
兄「そうそう」
妹「でもあたし、お腹空いた…」
兄「晩御飯は俺が何とかするから。だから妹は部屋で待ってろ」
妹「えっと………うん」
69:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:27:30.94 ID:v/zjkEod0
バタン
兄「…」
兄「……」
兄「どうすりゃいいんだろう」
71:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:33:19.89 ID:v/zjkEod0
○月☓日
今日はお兄ちゃんが疲れを見せてた
何だかよく分かんないんだけど、急に鍋がどうのとか、買い物に一緒に行ったとか
よくわからないことを口走ってた
とにかくお兄ちゃんは疲れてるみたい
妹のわたしがしっかりとサポートしてあげないと
72:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:36:06.85 ID:4VsOWxIQ0
これは…
73:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:37:43.19 ID:LV336p430
ふむ…
74:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:38:34.20 ID:v/zjkEod0
○月☓☓日
最近は、良くわからないことが多くなった気がする
今日みたいに、お兄ちゃんと話が噛み合わないことが多々
記憶にないものがおいてあることが多々
書いた覚えがないものが書いてあることが多々
変な感じ
76:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:41:57.05 ID:v/zjkEod0
△月□日
この世には親というものがあるらしい
わたしにはよくわからないけど
いるのはお兄ちゃんだけ
誰かが一緒にいた気がするって前に書いたけど
それってそれなのかな
わからない
77:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:45:03.01 ID:v/zjkEod0
△月□□日
よくわからない
きょうはこれくらいしかかくことがない
とくにやったこととかないし
おにいちゃんはすき
78:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:47:26.25 ID:v/zjkEod0
妹「…ん」
チュン チュン
妹「ふぁぁ…朝かぁ」
妹「んんん~…」のび~
妹「っはぁ。さって、今日も一日がんばろうっと」
79:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:49:07.62 ID:v/zjkEod0
妹「おはよーお兄ちゃんっ」ぼぶっ
兄「うわっ!ってなんだ、妹か」
妹「なんだとはなんだ、このやろうめ~」
兄「なんだはなんだだ。このやろう~」
妹「なんだって~?」グリグリ
兄「いだだだだ」
80:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:51:48.10 ID:v/zjkEod0
兄「おい妹。ご飯だぞ」
テレビ『今は正に勉強シーズン!みなさんはお勉強、はかどってますかー!』
妹「………」
兄「?」
テレビ『今日はかの有名な進学校、○○高等学校におじゃましています』
妹「…」
妹「…ぁ」
81:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:53:24.83 ID:v/zjkEod0
テレビ『みなさん、今年の自信はどうでしょうか?』
テレビ『えー、まあ、けっこういいかなって感じです』
妹「……」
テレビ『不安などは?』
テレビ『特にありません』
テレビ『流石○○高等学校の生徒。不安な気持ちは全く持ってないようです!』
テレビ『この自信を是非とも結果につないでほしいものですね。以上、○○高等学校からお伝えしましたー…__』
妹「………」
兄「ん、どうした妹。急に黙り込んじゃってさ」
82:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:54:47.41 ID:v/zjkEod0
妹(高等学校)
妹(さっきインタビュー受けてた人、お兄ちゃんとおんなじ位の年頃だったな…)
妹「……」
兄「おい妹、どうしたんだよ。そんな難しい顔して」
妹「なんでもない」
83:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:55:52.78 ID:v/zjkEod0
△月□□日
こうとうがっこうというものをしらべた
わたしはぜつぼうした
84:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 03:58:55.16 ID:v/zjkEod0
妹「お兄ちゃん、おはよ」
兄「妹か、おはよう」
妹「…」
妹(……)
妹「ねえ、お兄ちゃん」
兄「? なに?」
85:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:00:53.97 ID:v/zjkEod0
妹「お兄ちゃんてさ、まえは毎日どこかにいってたよね」
兄「どこかってどこさ」
妹「わかんないけど、お兄ちゃんは毎日どこかにいってたきがする」
87:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:03:05.60 ID:v/zjkEod0
兄「そんなことはないよ。いつも家にいたよ」
妹「そうかな…」
兄「そうだよ」
妹「でもさ、お兄ちゃん」
兄「? なに?」
妹「えっとね…わたしもさ、いま、毎日どこかに行ってたようなきがするんだよね」
88:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:05:20.55 ID:v/zjkEod0
兄「どこかって、どこだよ」
妹「わかんない。どこか」
兄「…ふーん」
妹「そういえばきのうね、なんとなくそとを見てたんだけど」
妹「わたしとおないどしくらいの人たちが、いっぱいどこかにむけてあるいてたの」
89:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:06:43.51 ID:v/zjkEod0
妹「それでなんとなくおもった。わたしもあんな感じで、お兄ちゃんといっしょにどこかにいってたなぁって」
兄「…」
妹「ねぇねぇお兄ちゃん。これってどうおもう?」
兄「…」
兄「うーん…どうだろうな。俺にはよくわからないや」
妹「……」
90:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:08:11.86 ID:v/zjkEod0
妹「お兄ちゃんもさ、あんな感じでまいにちどこかにいってたんじゃないの?」
兄「そんなことないよ。俺は妹とずっと家の中にいたよ。今まで」
妹「……」
兄「だから妹が言うあんな感じっていうのは、気のせいなんじゃないか?」
妹「……そうかな」
兄「そうだろ」
妹「……」
91:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:09:29.43 ID:v/zjkEod0
妹「じゃあ、わたしの机の上においてあるたくさんの本はなに?」
兄「ほん?」
妹「そう、本。わたしあんな本をいっぱい買った記憶なんてないんだけど」
兄「…」
兄(机の上においてあるたくさんの本…)
兄(…教科書)
94:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:11:17.43 ID:v/zjkEod0
妹「お兄ちゃんの机の上にもおんなじような本がおいてあるよね」
兄「う、うん」
妹「あれってなに?」
兄「えっと…確か、随分前に妹と一緒に買ったんだよ」
妹「わたしが、お兄ちゃんといっしょに?」
兄「そうだ」
妹「…」
兄「まったく、そんなことまでわすれちまったのかよ。天然さんだなぁ妹はー」
妹「……」
95:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:12:54.41 ID:v/zjkEod0
妹「あの、それじゃあもうひとつ聞いていいかな」
兄「ん?なんだ?」
妹「えっとね、これは質問と言うより相談なんだけど」
兄「いいよ。何でも言えよ」
96:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:15:22.66 ID:v/zjkEod0
妹「わたしね、さいきん、記憶のつじつまがあわないの」
兄「…」
妹「さっきのほんの話や場所の話もそうなんだけどね」
妹「しらぬ間にしらないものがおいてあったり、かいた記憶がないものがかいてあったりするの」
兄「……」
妹「きのせいかもしれないけど、日記の内容もまえとちがってうすくなっていってるし」
妹「それいぜんに、行動したことがないことがかいてあったりして、なんだか気持ちが悪い…」
97:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:17:25.37 ID:v/zjkEod0
妹「晩御飯のまえにもなっとくのいかないことがあった」
兄「…」
妹「わたしにはどこにも行った記憶がないのに、おにいちゃんはわたしと一緒にどこかにいったような言動だった」
兄「…あれは」
妹「そのくせ、わたしはこのいえで何をしていたかはおぼえてない」
兄「…」
妹「おかしいとおもわない…?」
98:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:19:44.56 ID:v/zjkEod0
兄「お、俺は別におかしな事じゃないと思うけどな」
妹「…」
兄「だって、俺にもたまにそういうことあるし。うん」
妹「…」
兄「まあ、俺達は兄妹だし。悪いところも似てるんだなー」
99:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:20:26.70 ID:v/zjkEod0
妹「お兄ちゃん、へんな無理しなくていいよ」
兄「え…?」
妹「わたし、今の自分がどうなってるかわかんないけど、おにいちゃんが何かしらの無理をしているっていうのはわかる」
兄「いや…べつに無理なんてしてないし」
妹「してる」
兄「…」
100:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:22:18.81 ID:v/zjkEod0
妹「おにいちゃんの嘘は、てにとるようにわかるの」
兄「……」
妹「やっぱりわたしたち、兄妹だからかな」
102:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:25:07.14 ID:v/zjkEod0
妹「ほんとはおにいちゃん、がっこう、ってところにいかなくちゃならないんだよね」
兄「なんで、そのこと…」
妹「なんとなく。テレビみてたらなんとなくきづいた」
兄「なんとなくって…」
103:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:26:25.04 ID:v/zjkEod0
妹「…それで、わたしもほんらいはそこにいっていなくちゃならないんでしょ?」
兄「……」
妹「でも、記憶がおかしなわたしは、がっこういってもいみがない」
妹「すぐに忘れちゃうもん」
兄「…妹」
104:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:27:44.61 ID:v/zjkEod0
妹「おにいちゃんは、そんな記憶がおかしなわたしを、みていなくちゃならないんだよね」
兄「…」
妹「だから…おにいちゃんはがっこうにいけない」
妹「まわりの人みたいに、ふつうなせいかつがおくれない」
妹「………あたまのおかしな、わたしのせいで…」ポロポロ
106:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:31:06.94 ID:v/zjkEod0
兄「い、妹…」
妹「わたしなんて、いないほうがいい」
兄「そんなことは」
妹「お兄ちゃんに無理をさせるだけのわたしなんて、いらないよ…」
兄「別に…いらなくなんて」
妹「……いらないよ!」ダッ
兄「あっ、待てよ…妹!」
バタン
兄「…」
108:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:32:09.53 ID:rdASGXA5O
なにこれ恐い
109:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:33:03.29 ID:v/zjkEod0
△月□□日
いらなくなった
110:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:33:53.05 ID:v/zjkEod0
___________________
______
妹
なに
今日はどうするんだ
どうもしない
なにかしろよ
なにも、しない
なんでだよ
なにも、したくないの
111:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:34:44.27 ID:v/zjkEod0
妹
なに
なんでもいいからさ、なにか望めよ
…どうして
どうしてって、なにかを望まないとどうにかなっちゃうだろ
113:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:35:20.52 ID:v/zjkEod0
いいよ、
どうして
だって、もともとどうにかなってるし
どうにもなってないよ
もう、いいの
よくない
115:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:36:07.22 ID:v/zjkEod0
…いいの
わたしはしにたいの
きえたいの
それ以外、のぞみたくないの
116:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:36:43.97 ID:v/zjkEod0
妹
なに
おまえはもう何も望みたくないんだよな
そうだよ
じゃあなんでいつもその曲弾いてる
しにたいからだよ
118:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:37:39.93 ID:v/zjkEod0
あの曲を聴くと、たくさんのことから開放されて、とても心地が良い
自分がどこまでも広がっていく気がする
少しの間だけ死ねる
だから弾く
120:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:38:14.69 ID:v/zjkEod0
『人の望みの喜び』
なにを望んでいるにしろ、それがその人の唯一の望みであり
同時に、喜びである
122:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:39:28.08 ID:v/zjkEod0
□月□日
いもうとがしんだ
よくわからない
いもうとはすき
ゆいいつののぞみはいもうと
もうあえる
おれはいま
よろこびにみちみちている
お終い
125:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 04:43:02.01 ID:MoITNm8F0
よければ解説お願いします
128:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 05:00:34.53 ID:v/zjkEod0
妹は記憶がどんどん消えていく病気
両親は既に他界しています
妹は『主よ、人の望みの喜びよ』に一種の逃避(死)を覚え、やがて死以外のものを望まなくなります
兄にとって妹は望みであり、大切な人でもありますので、妹がいったところに行くことを望みます
妹がしたように兄も一切のことをやめ、死(妹)に近づきます
兄は妹のいる世界に近づいて行っていることがたまらなく心地よかったため「みちみちている」と口にしました
131:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 05:13:29.20 ID:SSjFBLp10
ごめんなさい俺真っ先にエヴァを思い出しました
132:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 05:20:59.81 ID:v/zjkEod0
ごめんなさいエヴァ大好きです
133:以下、魔王にかわりまして勇者がお送りします:2012/02/14(火) 05:22:27.97 ID:MoITNm8F0
なるほどwwww
【 関 連 記 事 】
これぞSS