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  魔王「死に逝くものこそ美しい」女勇者「その通りだ」【エピローグ】

【まおゆー@管理人】
これは、魔王「死に逝くものこそ美しい」女勇者「その通りだ」のエピローグとなります。
未読の方は先にそちらをお楽しみ下さい。



541:>>1:2014/05/31(土) 20:57:53.45 ID:FFIHiVFwo

*************


ニア エピローグ


*************






542:>>1:2014/05/31(土) 20:59:18.94 ID:FFIHiVFwo

《 魔王城 魔王・勇者 結婚式 》




機械王「王ヨ、ソシテ王妃ヨ」

勇者「機械の人!ひさし……いいえ、初めまして、そう、私がこの人の妻」

魔王「機械王よ、良くぞ招きに応じた、この我自ら褒め置こう」

勇者「もう、素直にありがとうと言うべき」

魔王「む……」

機械王「構イマセン、ムシロ私ナドガ来テヨカッタノカ」

魔王「何を言う、貴様、我の婚姻を祝えぬと申すか」

勇者「機械の人、今のは『そんなことは無い、大いに楽しんでくれ』と言っている」

魔王「む……」





543:>>1:2014/05/31(土) 21:00:20.89 ID:FFIHiVFwo

機械王「ナント、王妃ハ翻訳デバイスヲ搭載シテオラレルノカ」

勇者「機械の人、その言葉の意味はよく解らないけれど、卑下しなくて良い、私も貴方に祝ってもらえて嬉しいわ」

機械王「ソレハナニヨリ、ダガ私ハアナタ方トハ違イ、交合スルコトデ子ヲナスコトヲ知ラナイ」

勇者「こ……ッ!?」

魔王「言葉を選べ貴様」

機械王「申シ訳アリマセン、シカシ、ソレガ不適切トワカラヌ程ニ、コノ婚姻ノ意味ガ見出セナイノデス」

勇者「機械の人……」

機械王「ソンナ私ガアナタ方ヲ祝ッテモ良イモノカト……」



魔王「……王として貴様を導こう、ゴーレムの長よ」





544:>>1:2014/05/31(土) 21:01:22.19 ID:FFIHiVFwo

機械王「魔王様……」

魔王「歩み寄るのだ、我は知っているぞ、巡らぬ生命にあらずとも、我等は理解し合い、歩み寄れることを」

機械王「魔王様、シカシ我等ハ、アマリニモ他ト在リ方ガ違イマス、ソモソモ、コノカラダノ分子構造カラ……」

勇者「体が機械や石なら、いくらでも体を取り替えられるということ」

機械王「王妃ヨ……」



勇者「体の構造が違うなら、私達の体を模して機械で造ればいいじゃないか、そうすれば少しでも歩み寄れる」



機械王「…………ッ!!」



魔王「お前は何を言っておる、出来るはずがあるまい」

勇者「機械の人なら出来る」



機械王「タッタ今、私ニ電流ガ走リマシタ、ア、セン絡シタワケデナク」


この後、ゴーレムの技術を転用し、魔力を原動力とした人造臓器や、人型駆動ゴーレムが魔王軍に編成されたり、

機械王が女性型外殻に仕様変更し、女王になったりしたのはまた別の話。





545:>>1:2014/05/31(土) 21:02:48.78 ID:FFIHiVFwo

*************




菌糸王(小)「「「見なさい、ああして我等の眷属が下等種族共を支配する様を」」」

キノコ屍人「アウー」



「酒だぁっ!!酒こっちにまわせぇ、うひゃひゃひゃひゃ!」

  「おい!こっち向くな!吐くなよ!?吐くなよ!?」
  
「うぼろろろろろろ……」

      「馬鹿共がぁっ!今日は控えろって言っただろうが!消し炭にされてーか!?」



菌糸王(小)「「「愉快極まりない、やはり我等こそ至高の種族であると言えましょう」」」

キノコ屍人「アウー、アウー」





546:>>1:2014/05/31(土) 21:03:59.39 ID:FFIHiVFwo

魔王「菌糸王……貴様、そのナリはどうした?」

菌糸王「「「これは魔王様、この度のご成婚、お慶び申し上げます」」」

魔王「良い。貴様もよくぞ招きに応じた」

勇者「キノコの人……本当に原木に身を移したの?」

菌糸王「「「これは王妃様、初めまして。私が菌糸を統べるものにして魔王様一の下僕、菌糸王でございます」」」

勇者「相変わら……いえ、丁寧な人ね、今日はわざわざありがとう」

菌糸王「「「いえ……」」」

魔王「この者の功労はまことに優れたものである」

勇者「そうなの?」

菌糸王「「「魔王様……!」」」





547:>>1:2014/05/31(土) 21:05:35.06 ID:FFIHiVFwo

魔王「その通りだ、酒精に限らず、人の領域にある万能薬、発酵による食料の長期保存、コヤツの力がなければ為しえなかったことは多い」

勇者「流石はキノコの人ね、貴方の眷属にはいつもお世話になっている」

菌糸王「「「……遂に、遂に証明された、軽視され続けた我が一族が、遂に至高の種族であると!魔王様!王妃様!」」」



魔王「特に 『食卓に並ぶこやつらの多彩さ』 は他の追随を許さぬ」



菌糸王「「「……え?」」」

勇者「成程、でも貴方は知らないだろう、納豆、醤油、味噌、これらはこのキノコの人の眷属がもたらす最高の業と言ってよい」

魔王「む……なんだそれは、察するに発酵させたものか?」

勇者「そう、特に醤油は万能の調味料と言ってよい、あれなくしては料理は語れないほどに」

魔王「なんということだ、我は知らなかった」





548:>>1:2014/05/31(土) 21:06:59.94 ID:FFIHiVFwo

魔王「なんということだ、我は知らなかった」

勇者「な、嘆くことは無い……こ、これからは、その、毎日でも作ってあげる……」

魔王「む……そうか」

菌糸王「「「……あの」」」

勇者「いつもありがとう、キノコの人」

菌糸王「「「え、ああ、どうも」」」

勇者「貴方がもたらす豊かさはこの人の言うとおり、他の追随を許さないかもしれない」

菌糸王「「「…………」」」



勇者「 こ れ か ら も よ ろ し く 」



菌糸王「「「……でございましたか?」」」

魔王「……何?」




菌糸王「「「美味でございましたかっ!?」」」





550:>>1:2014/05/31(土) 21:08:59.54 ID:FFIHiVFwo

*************



獣王「ハナ様……今日は一段とお美しい毛並みだ、私などの眼には毒でございます」


ハッハッハッ ワンッ


獣王「そ、その、ハナ様は巡る生命にお戻りになられたと聴き及びました……」


ワンッ


獣王「どなたか……つがいになると決められた者がいるのであろうか……」


ハッハッハッ……


獣王「不肖ながら、私は一族の王として最も優れた力を持ちます、知恵も、数多在る獣に属する魔の中で、私を越える者はいません!」


ハッハッハッ……



獣王「わ、私は、あ、貴方様と……っ!」





551:>>1:2014/05/31(土) 21:10:18.79 ID:FFIHiVFwo

にゃーん……


獣王「ッ!?ヨ、ヨミ様!?」


ハッハッハッ


にゃーん、にゃーん


獣王「な、なりませぬ、またそのようにお戯れを!ああ、恐れ多いのですが、私の肩に昇らないで頂きたい!」


にゃーん……


獣王「ああ……ヨミ様、なんと、なんとそのような……」


ワンッ! ワンッ!


獣王「ああ!?ハナ様、お待ちください!ハナ様!ハナ様ッ!!」






勇者「…………」

魔王「…………」





552:>>1:2014/05/31(土) 21:12:02.36 ID:FFIHiVFwo

勇者「まさか、あんな事になっているとは」


魔王「あの獣王は誇り高くてな、我の言うことでも中々に厳しく『我』を貫くのだが、ハナとヨミには頭が上がらぬ、下がりっぱなしである」


勇者「彼女達はあの人たちにどのように見えているのだろうか」


魔王「後光が差すほどに美しくあるらしい、《堕天》の後でもそれは変わらぬのであろうな、なにせ我と共に四十億の年月を越した獣である」


勇者「彼女達が一番可愛く見えるのは親の贔屓目のようなものであると思っていた」


魔王「親馬鹿というやつか」


勇者「馬鹿とは何事……でも幸せになってほしい」


魔王「我は認めぬぞ」


勇者「貴方こそ親馬鹿」


魔王「馬鹿とは何事か」





553:>>1:2014/05/31(土) 21:13:17.85 ID:FFIHiVFwo

*************



妖精王「やーやーお二人さん!元気ー?結婚おめでとー」

魔王「貴様こそ良くぞ我が招きに応じた、褒めて遣わそう」

妖精王「相変わらず可愛い魔王様だねー」

勇者「妖精の人、今日はありがとう」

妖精王「アンタがお嫁さん?羨ましいねー、魔王様はアタシが狙ってたのにさ……でも全然なびかねーの」

魔王「…………」

勇者「そうなの?」

妖精王「そうそう、でもアンタ美人だしさ、大人しく譲ることにするさ……けど」

勇者「……何?」





554:>>1:2014/05/31(土) 21:15:31.58 ID:FFIHiVFwo

妖精王「アンタおっぱい小さいね?揉んで大きくしてあげよーか?」

勇者「死ね」

妖精王「なんだとぅ!?」

魔王「よさぬか、それより貴様……わかっているのであろうな?」

妖精王「何が……ああ、好きだねー魔王様も……」

勇者「 ? 何のこと?」

妖精王「いやー、伝承にある始原の神にして魔の頂点が実在したと知ったときは驚いたもんだけどまさか、他の伝承まで本当だったとは……」

魔王「疾く、差し出すが良い」

妖精王「はいはい、……オラァ、野郎共!アレを出せッ!!」



妖精族「「「「「 応ッ!! 」」」」」



勇者「……何が始まるの?」





555:>>1:2014/05/31(土) 21:17:37.29 ID:FFIHiVFwo

*************



《 魔王城 玉座の間 婚姻の儀 》



女賢者「えーコホン、それでは略式ながら、式を執り行いたいと思います、皆様ご静粛に」



最後に産まれた勇者の連れ合いである賢者が、式の開始を宣言する。

先程までの喧騒が嘘のように静まり返り、数多の魔達は跪き、皆一様にこれから行われる神聖な儀式の行方を見守っていた。

その存在一つで数多の命を統べる各界の王ですら、皆跪く、それは一組の男女に対してである。



始原の神にして魔の頂点に立つ存在。

始原の物語に語り継がれる、生命の恩恵を受けた伝説の勇者。



終わりにして始まりの物語に語り継がれ、その実、遂に結ばれなかった二人は今、共に生を歩む絆を結ぶ。





556:>>1:2014/05/31(土) 21:19:19.13 ID:FFIHiVFwo

女賢者「汝、魔の頂点に立つ者よ、汝はいついかなる時も妻となる者を愛し、敬い、死が二人を分かつまで歩みを共にするか」



魔王「是非もなし、四十億の時を我はそうして過ごした。そして否である、我は死して尚この女を愛そう」



誓いを立てる象徴はこの場に無い。人の領域ではそれは、愛の女神像の前で、もしくは絆の神、黒き猫神の神殿で、それぞれの神に対し誓う。

だがこの二人は違う、己に、相手に誓うと心に決めたのだ。



女賢者「汝、生命を知る者よ、眼に炎を宿した真の星の子よ、汝はいついかなる時も夫となる者を愛し、その生を支えることを誓うか」



勇者「誓おう、私はこの人を死んでも愛すると。そしてそれは違う。支えるのではない、共に戦おう、血の一滴まで尽き果てたとしても私は戦い続ける」





557:>>1:2014/05/31(土) 21:21:06.23 ID:FFIHiVFwo

あるのはその二人の絆を象徴するもの。
数多の生命の結晶。
天に、地に、海に、あらゆる生命の恩恵を集め創られた、それは最早、塔と言っても過言でもない。


白き巨塔。ただし甘味よって造られた……である。


魔王の勅命によって、長きに渡り甘味を研究し続けた妖精族が技の粋を結集したものである。



女賢者「では、この場の皆に問う。彼の者達の誓いを聴き、異議のある者は?」


「「「「「 無しッ!! 」」」」」


女賢者「……よろしい、それでは二人とも、誓いを……」





559:>>1:2014/05/31(土) 21:22:46.50 ID:FFIHiVFwo

暗黒の如き黒き装束を纏った男は花嫁のヴェールをたくし上げ、その顔を認める。



男はかつてその眼に宿る炎を忌々しく思った。

嫉妬した。

そして恋焦がれた。

こうして見えることを待ち焦がれた。



眩いばかりの白き装束を纏った女もまた、男の眼に宿る炎を認めた。


女はかつてその炎を灯した。

美しく思った。

そして恋焦がれた。

こうして見えることを待ち焦がれた。



しかし、





560:>>1:2014/05/31(土) 21:24:42.17 ID:FFIHiVFwo

魔王「……貴様、今の言葉はなんだ?」


その荘厳な雰囲気の中にあって男は不満を洩らす。


勇者「……貴方こそ今の言葉はどういうつもりだろうか?」


そして女も剣呑な返答を返す。



魔王「まるで貴様が 囚われの姫君を救う英雄 のようではないか、その雄々しさは一体なんなのだ?」

勇者「まるで貴方の方が 恋焦がれた乙女 のようじゃないか、その可愛らしさは一体なに?」



何時までたっても誓いを示さぬ二人の様子を怪訝に伺う参加者達に動揺が走る、あってはならない想像が駆け巡る。





561:>>1:2014/05/31(土) 21:25:50.46 ID:FFIHiVFwo

魔王「言うではないか」

勇者「貴方こそ」

魔王「なれば我こそが夫であると証明してやろう」

勇者「やれるものならやってみるといい……『少し面白い』」

魔王「貴様……」



女賢者「あ、あの……」



そして動揺が走る会場を収めるため、当人達の様子を伺う女の賢者の言葉が引き金となった。



魔王「ふむ……っ」

勇者「ん"っ!?」

女賢者「きゃっ……!?」



それはあまりに粗暴、誓いの為のそれとしてはあまりに荒らか。





562:>>1:2014/05/31(土) 21:27:45.65 ID:FFIHiVFwo

純白の衣装を破りかねぬほど力強く引き寄せ、
顔をもたげ口を貪る様は会場に居合わすすべての存在の眼を引き寄せ、
同時に満月のごとく丸く変化させ間抜けな顔を晒させる。



魔王「んー……」

勇者「ん"ん"っ!ん"ーっ!?」

女賢者「す、凄い……っ」



ゴクリ、と唾を飲み込んだのは誰のものであろうか。

瞳を潤ませ、新郎の胸を力なく叩く花嫁の腕はやがてダラリと垂れ下がり、
全身に至ってはこのまま引き寄せるために腰に廻した男の腕が離れればへたり込んでしまいかねぬほどに弛緩していた。



魔王「っ……ふむ」

勇者「ぷはっ……」





563:>>1:2014/05/31(土) 21:29:03.34 ID:FFIHiVFwo

女賢者「…………」


機械王「…………」


菌糸王(小)「「「…………」」」


獣王「…………」


妖精王「…………」






従者「…………グッ!?…………ブフッ!…………カハッ!?」

ハッハッハッハッハッハッハッハッハ……

にゃーん……





「う…………」





564:>>1:2014/05/31(土) 21:29:57.52 ID:FFIHiVFwo

「「「「「ウオオオオオォォォォォォォッッッ!!!!」」」」」



魔王「ふむ……悪くない。もっと早くにこうしておくべきであったな」

勇者「あ、あな、貴方……ッ!?」

魔王「……愛しておるぞ、馬鹿者」

勇者「……は、はいっ」



「「「「「ウオオオオオォォォォォォォッッッ!!!!」」」」」



心を持たぬゴーレムも、その個が満たされたことを祝福した。

つがいの概念を持たない菌糸も、新たな命の兆しを祝福した。

なにより絆の重みを知る獣も、新たなつがいの誕生を祝福した。

性の概念が曖昧な妖精も、二人の深い想いを祝福した。




そして……





565:>>1:2014/05/31(土) 21:31:50.65 ID:FFIHiVFwo

*************



《 一年後…… 》



う、ぐうううううううううっ!?痛いいいぃぃぃっ!!

勇者様!頑張って、息を大きく吸って!

意地見せろぃ、人間ッ!もう頭見えてんぞ!!

奥方様!今です、息んで!!





魔王「あれは何故苦しんでおる?我はどうすればよい?何を滅ぼせばよい?」

従者「産みの苦しみを創り出した神でしょうか?直ちに出陣の準備を……」

機械王「愚カナ神共メ、自分達ガナニヲ敵ニ廻シタ理解シテイナカッタラシイ」

菌糸王(小)「「「全力でございますか?天界を我が苗床に変えて差し上げましょう」」」





566:>>1:2014/05/31(土) 21:33:23.88 ID:FFIHiVFwo

獣王「待つのだ貴公ら、産みの苦しみは我等の生物の進化による必然で……」

従者・機械王・菌糸王「「「ア"ア"ッ!?」」」



ガチャ



魔王・従者・機械王・菌糸王・獣王「「「「「ッ!?」」」」」



妖精王「うっせぇんだよ!野郎共と種無しがぁっ!!うろたえてんじゃねーッ!!!!」



魔王・従者・機械王・菌糸王・獣王「「「「「……」」」」」


妖精王「次ぃ邪魔しやがったらマジでぶっ殺すぞっ!?」


魔王・従者・機械王・菌糸王・獣王「「「「「……ハイ」」」」」



妖精王「チッ……情けねぇ」

バタンッ



魔王・従者・機械王・菌糸王・獣王「「「「「……」」」」」





567:>>1:2014/05/31(土) 21:34:35.82 ID:FFIHiVFwo

魔王「……血が」



従者・機械王・菌糸王・獣王「「「「ッ!?」」」」


魔王「妖精王の服に血が付いておった……アレは死ぬのか?馬鹿な……させぬ、あってはならぬ……」


従者「魔王様……何を?」



魔王「…………」




ウオンッ!!




魔王「……ハナ」


にゃーん にゃーん


魔王「……ヨミ」





568:>>1:2014/05/31(土) 21:35:52.14 ID:FFIHiVFwo

我は何を考えていた。

世界を操り、この出産を安楽なものにしようと?

……生命を冒涜する気か?


我はあの女を、これから、否、今まさに産まれんと戦っている、まだ名も無い戦士の最初の戦いを侮辱する気か?

否、否である。



魔王「我が妻はこの星、最強の女である、そして産まれてくる我が子はこの星、最強の存在となる戦士である」

魔王「敗けるはずがあるまい、そうとも、実に容易い戦である」

魔王「我は信じる、我妻を、我が子を。この世界と、運命と戦い、それを降し、アヤツ等の凱旋する姿が見える」





569:>>1:2014/05/31(土) 21:36:57.09 ID:FFIHiVFwo

強がりである。

震えが止まらぬ。

この我が恐怖に震えているというのか、他を信じるとは斯様に恐ろしいものなのか。



いつしかの、あの女が塵と消えた記憶が蘇る。

脳に焼き鏝を当てられたような、心臓を抉られたようなあの痛苦を、我は再び味わうのか?

……否、否、否、否である。



魔王「我は信じる。あの共が敗けるはずが無い」



そうとも、我は、もう独りでは無いのだ。





570:>>1:2014/05/31(土) 21:39:16.30 ID:FFIHiVFwo

*************



魔王「…………」



う、あああ、あああああああああっ!!

何刻たった?あの女の苦しむ声を聞きだして、どれ程の時が過ぎた?

まだか?

それとも……





……おぎゃぁ!おぎゃぁ!



勇者様!産まれました!産まれましたよ!!

やるじゃねーか人間っ!!よくやったーッ!!

奥方様!お世継ぎですっ!元気なお世継ぎですよッ!!





魔王「ッ!!!!」





571:>>1:2014/05/31(土) 21:40:45.15 ID:FFIHiVFwo

蹴破るが如く扉の向こうへと駆け込む。

この時にあっては誰もそれを咎めない。皆一様に慈愛に満ちた表情でこちらを見やる。
済まぬ、貴様等には礼の施しようが無いほどに借りを作った。


女賢者「魔王さんっ、早く、勇者様のところにっ」


だが今この時は、


勇者「…………勝ったよ」

魔王「…………よくやった」


疲れ果てた顔でそう微笑む女。かつて、そして今ですら全てを投げ出しても惜しくない、愛おしい我が妻。


だが、そんな言葉しか出てこなかった。


これが我妻である。

なんと雄々しい、なんと美しい、なんと尊い。





572:>>1:2014/05/31(土) 21:41:54.56 ID:FFIHiVFwo

おぎゃぁ!おぎゃぁ!



魔王「……よくぞ勝利した……流石は……我の子である」


侍女「……魔王様っ」



侍女より、布に包まれた我が子を抱き寄せる。




これが我が子である。





573:>>1:2014/05/31(土) 21:43:00.07 ID:FFIHiVFwo

魔王「この者は何故泣き喚いておる、病を得ているのか?」

勇者「それが正常なの、泣き叫びながら呼吸をする」


そうしてまで生きようとしているのか。
なんと猛々しい。



魔王「この者は何故はっきりと視えぬ。いかなる幻術を唱えておるのか?」

勇者「貴方の眼が涙で濡れているの。貴方は喜んでいるの」


眼が霞むほどにまでか。
なんと美しい。



魔王「この者は何故このように軽い、空腹であるのか?」

勇者「そうかもしれない、そしてそれは貴方がこの子を大切に思っているからこそ、そう思えるの」


魔王であった、始原より再生させたとはいえ、数多の生命を奪ったこの我がか。
なんと尊い。





574:>>1:2014/05/31(土) 21:44:28.72 ID:FFIHiVFwo

魔王「この者は何故、我に似ている、そして何処か貴様にも似ている」


勇者「それはこの子が貴方と私の子だから、そうして……」


魔王「そうして……」




勇者「生命は巡るのよ」




魔王「そうか……そうか……っ」





575:>>1:2014/05/31(土) 21:45:39.33 ID:FFIHiVFwo

始原の神と崇められた我にして、全く知らぬ新たな命よ、星の申し子よ、戦士にして勇者である我の子よ。



この我自らが、



貴様に名をくれてやる。



恐れ多いことであろう。



願わくば、この名を持って……




魔王「今日より貴様は 『…………」





576:>>1:2014/05/31(土) 21:47:57.03 ID:FFIHiVFwo

  魔王「死に逝くものこそ美しい」 女勇者「その通りだ」

             エピローグ END





579:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/05/31(土) 21:55:47.23 ID:BjFZw2kAO

最大級の乙を>>1に贈ります
ありがとう!!!





580:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/05/31(土) 22:01:02.36 ID:bJTQUuF0o

おっつ





584:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/05/31(土) 22:10:50.16 ID:7IxMMFnQ0

ヨミとハナはメスだったのか……

良かったぞ乙





587:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/05/31(土) 22:20:46.83 ID:71qIkdkVo

乙乙
少し面白かった
次があるならまた読みたい





601:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/01(日) 03:44:01.00 ID:IVidNg1Zo

楽しませてもらった
次回作も楽しみにしている





613:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/01(日) 21:46:06.35 ID:TKzejz2DO

全力で乙!!
頭から尻尾まで面白かった
笑えて泣けて胸に迫り腹は減る最高のSS






元スレ:魔王「死に逝くものこそ美しい」女勇者「その通りだ」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399276665





  

【 関 連 記 事 】


乙、サイッコーだったぜ!
[ 2014/06/05 03:23 ] [ 編集 ]
このSS的には『少し面白い』と賛辞を贈りたいが少しどころではない
[ 2014/06/05 15:06 ] [ 編集 ]
あなたが神か
[ 2014/06/05 18:09 ] [ 編集 ]
これはマジで乙!
妖精王って女だったのか
[ 2014/06/06 18:39 ] [ 編集 ]
素晴らしい。
[ 2014/08/12 09:38 ] [ 編集 ]
くっそ、画面がぼやける…!
[ 2014/12/07 16:07 ] [ 編集 ]
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